大西洋同盟の亀裂

旧自由諸国連合の盟主ともいうべき欧米諸国がイラク問題を契機に深刻な亀裂が生じている。戦後で最も深刻な危機を胚胎させてしまったのではないか。これは、世界情勢の未来を占う上で極めて深刻な事態である。

1.本欄で、私は欧州諸国の強気の背景にEU通貨の結成があると指摘した。EU結成は戦後50年かけてのヨーロッパ諸国の対米経済反撃と見るからだ。人口2億人の大経済圏は米国に匹敵する。ドル覇権からの離脱である。現にイラク攻撃賛成の英国はEUに加入していない。

2.次に、中近東とアフリカはヨーロッパ諸国の歴史的にもいわば経済圏といえるのではないか。利権が米国より大きい。ヨーロッパは戦後アジアの植民地を失った上に更にこの地域での経済利権を失う恐怖が背景にありはしないか。

3.大西洋同盟の亀裂で、漁夫の利を得るのは、中国、ロシア初めとして、テロ国家と言われる北朝鮮・イラク等そしてイランで、野望を持つ反米諸国の核保有への道を開くこととなる。そうなると世界は混沌として大動乱の道を開くであろう。米国はどうしてもここは引けないし屈服してはならぬ。フランス、ドイツ、中国、ロシアに米国のような力がなく世界は大混乱し無頼な国国が跋扈しよう

4.アメリカが引けば、現在米国の果たしている世界的役割の瓦解を意味するが、その影響は深刻且つ重大である。米国は絶対にここは押し切らなくてはならぬと思う。

5.更に、穿って考えると、米国経済の不振もあり死の商人の復活だ。資本主義の歴史はそれを証明する。更に、私はアメリカはEUの打撃を図っているのではないかとさえ思う。イラク周辺は従来の予測以上の大油田地帯だとIT発展により近年判明した。中近東に対しての戦略的な果敢な仕掛けのある米国かもしれない。

単一民族、島国日本の視線では摩訶不思議な世界情勢は分かりにくい。将に、何が起きるか分からぬ、混沌としてきた。

国家、民族の生き残りは、真剣勝負の薄氷を踏むような洞察と決断を要する。大衆には出来ない。大マスメディアなどの無責任さとはちがう。戦後日本国民はこのような事態の経験はない。我々は国家、民族として何をなすべきか。先ずは危機意識の徹底と自尊自立の精神確立が急務である。覚悟を固めなくてはならぬ。