9月--今日の格言・箴言16  安岡正篤先生の言葉3
第三回目となるが、国難ともいえる現在、再び先生の言葉の中から政治と行政に関するものを選択し、日々連ねてみたい。
安岡教学関係徳永圀典蔵書より

1日 政治における省、役人というものはつまらないことを省けばよいのだ。-知命と立命- 民衆はテンデバラバラである。すると紛糾し混乱し衝突し破滅する。指導階級が、いけない事、良心・理性の役割をして民衆の代わりに省み省くのが政治。
2日 政治家の頽廃は堪えがたいもの。-東洋宰相学-
   
民衆にとり実に政治家の頽廃は堪え難いが心ある政治家もそうであろう。これを恐れて政治家たるを躊躇する人も少なくない。これらの人々の信念と勇気が名誉を回復する。
3日 任用とは、用いて任すこと。-経世瑣言- 政治の要諦は、勝れた人材を知ること。知って用いる事、用いて任す事。近代人は人を知らぬ。
4日 政治と役人を善くすることが、国民生活をよくする一番の近道-為政三部書 政治は俗悪で迷惑なもの、然し国民の運命を左右する。政治と役人を良くするのが一番の捷径である。彼らに勝れた哲学や道徳こそ必要。
5日 政治には容易に私がはいりやすい。-老荘思想- 政治は複雑だから容易に私が入りやすい。
6日 情緒ある政治家が欲しい。-青成の大成- 明治と現代の政治家との違いはこの精神と情緒の相違。至醇熱烈な精神情緒の有無にある
7日 政治家は文字通り自らが正しい人間であるべきだ-醒睡記- 人間又時代人の心について、深い哲学と見識を持って政治に当たらねばならぬ。
8日 宰相は安心して信頼できる人-醒睡記- 腕でもない、頭でもない、金でもない。やはり徳である。この根本をいかに立てるかが第一義である。
9日 真の指導者は、謙虚で、私がない。-人生の大則- 真の指導者は必ず謙虚で私が無く、自己の利害・欲望により汚されない良心から起つべきものである。
10日 エリートが国政を担当すべきである。-天地有情- 大衆化する程勝れた指導者いわゆるエリートが国政に当たらねばならぬ。人材の乏しい議会ほど空念仏、投機的小人の跋扈をひどくする。
11日 政治を行うかに何か新しい手を、何か利を、何か与える、何か思い切った手を打って行くというよりも、案外妨害しておるものを取り除くことが、それこそ 汚染し結滞しておるものを取り除くことが、大きな政治になっていくこともあるわけです。-呻吟語を読む-
12日 一事を生やすは、一事を減らす。-人間の生き方- よくしょうと思えば今日の害悪がどこにあるかをまず見定めて、それを除くことから始める。一事をなす前にまず一事を減じなくてはならぬ。
13日 省は「かえりみる」、「はぶく」の意味-論語・老子・禅- 省みて省くことの根源は自己、人間に関する一切はこの省に尽きると申して宜しい。
14日 不朽の境地。-東洋政治哲学- 簡素な生活に甘んじ書を読み自然を楽しみ悠々自適が健康にも善く心を永遠の境に馳せ、大きな目から見ればどれくらい天下国家の為か、是れまた一不朽の境地。
15日 民を知り、国を知り、またこれを愛す。-東洋学発掘- 明治の元勲、幕末の人物はよく人を知り、時勢を知り、国家を知り、また愛した。山縣有朋、西郷隆盛、大久保利通、みな毅然として自己を持っていた。信念、識見を持って国民を知り、国を知り、これを愛した。
16日 政治家に必要なものに、熱烈な情緒と精神。-運命を開く- 明治時代と今日の政治家との相違。第一は情緒・精神、至醇な熱烈な情緒・精神が今時の政治家は持ち合わさない。天下・国家の為に国事を憂い泣いたのは明治時代の政治家で今日の政治家は泣かない。
17日 エリートの三つの柱。-男子志を立つべし。- 帝王学1.原理原則を教えてもらう師を持つ。2.直言してくれる側近を持つ。3.よき幕賓を持つ。(幕賓とは直言してくれる在野の人物。)
18日 政治は結局は人物である。-百朝集- 国民を救うには法律や機構や政策だけでどうなるものではない、結局は人物である。自民党総裁候補も野党党首も粒の小さいことよ。
19日 人間味のない政治、道に合わぬことが行われている国。-東洋学発掘- 近頃の政治は人間味かせなさ過ぎる。理屈っぽい。
20日 教養・抱負。品格ある人物。-人間の生き方- これらのある人物が政治家になると政治も変化するが現代政治家は余りに俗っぽい、為にいかに世を汚染していることか、計り知れない
21日 名士という者は、案外くだらなぬ者多し。-童心残筆- 地位や名誉やお金の獲得に熱中し小人に囲まれ雑務に忙殺されている連中が多い。
22日 役人道徳。-経世瑣:言- 信念ある役人は何も恐れることはない。勇往邁進するがよい。役人は命がけのことである。名利はおろか命もいらぬ者にして初めて役人たるべきの役人道徳の確立を急務とする。
23日  国歌・国旗を憎む国は、世界広しといえどもない。-古今に学ぶ- 国歌・国旗に難癖つける者があるという日本は世界に現在でも歴史的にも、不思議なほど面妖な事実。外国人も理解しない、戦争に負けてなんで国旗を憎む。なんで国家を憎むのか。
24日 本当の政治、本当の世の中。-王陽明- 政治に当たる人の心境・利己的打算・先入主の偏見・伏在する強迫観念・誤解している理論・生活の悪習慣・あらゆる虚偽・不徳を糾すことなしに本当の世の中は実現しない。
25日 堕落、若い世代の堕落はすでに大人が腐敗しておる証拠-人間を磨く- ジャーナリズムの弊害は深刻。若い世代に堕落を帰しやすいが先輩も責任あり。大人が腐敗しているからだ。
26日 泰平の悪風、余り平穏無事に過ぎるとだらしなくなる。-偉大なる対話- 身体とか健康は絶えず鍛錬が必要。精神もそうだ。苦しみが無いと精神が延びきってしまう。人間の頭はそのように出来ており難問題に取り組むほど宜しい。
27日 人間と国家と、愛護せねばならぬ。-心に響く言葉- 国家と政府と混同する。政府を憎むあまり、みな国家を憎む。政府を憎むために国家を否定する。これは歴史を知らぬものだ。そこで自由と放縦を混同し、放縦のために道徳や法律を無視する。これは愚かな自殺行為。我々はあくまで道徳法律を尊重して人間、国家を愛護せねばならぬ。
28日 英国の運命、国も、民族も、常にどこか若い、未完成のところがなければならぬ。-世界の旅- 世界に雄飛した英国、英国は出来上がってしまった。老成したのが悲運。老子のいうように、人も、国も、民族も、常にどこか若い、未完成の処がなくてはならぬ。英国は若さを失い成長がとまった。生活程度も上りつめた。頭も完全に常識化した。
29日 久敬、久熟。-人間の生き方- 人間の交わりも年が経つにつれて敬愛の深まる場合もあれば、逆に鼻について嫌いになり、つまらぬと思うようになる場合とある。孔子は「平仲、善く人と交わる。久しうして人、之を敬す」久敬、久熟これはインスタントの反対。より深く尊敬するような人物でなければ駄目である。
30日 評判は当てにならない。-安岡正篤先生講演集- 大衆は種種雑多で、そんなに高い事は分かるものではないし、自分の利害だけで生きている者は、自分の利害に合わない者を悪く言う。自分の感覚的な低級な趣味に生きている者から言えばそんな程度の頭や感情で分からん人間を悪くいうのは当たり前である。さりとて誰からも悪く言われるというのも、どっかいけないに相違ない。だから立派な人が誉めていい加減な奴がくさすというのは、これが本当の人です。