成16年12月--今日の格言・箴言31 韓非子A 

韓非子―異端の書といわれる。ホームページの愛読者から、韓非子をやって欲しいと言われた。20年前に、垣間読んだ、その時、友人に、そんなもの読んでいるとかと言われたことがあった。異端の書、韓非子に挑戦する。平成16111日 徳永圀典

平成16年12月

1日 「君主の三守」

人主に三守あり。三守完ければ国安くして身栄え、三守完からざれば国危うくして、身殆し。

三守とは
1.重臣の失敗、又部下から意見を聞いたら胸にしまい漏らさない。
2.臣下に利益や損害を与える等も自分自身の意思で行うこと。
3.
裁くべき政治的仕事を嫌わない。生殺与奪の権は渡さない。

2日 「部下にさせない事」 人臣は名誉請謁−せいえつーにあらざれば、もって進取するなく、法に背き制を専らにするにあらざれば、もつて威を為すなく、忠信を仮るにあらざれば、もって禁ぜられざるなし。

臣下には注意が必要。臣下を外の臣に監視させるのは危険。臣下とは好む者同士ならば互いに褒めあい、憎む者同士は互いに貶しあうだけだ。法に従うのみ。

3日

「お喋りと無口」

人臣の易く事を言う者は、少しく資を索めて事をもって主を誣−しーうるに、主誘われて察せず、よりて之を多とするは、すなわちこれ臣かえって事をもって主を制するなり。

お喋りの大風呂敷も、無口で成果を挙げるのも、何れも韓非は言行不一致という、罰さえ必要という。成果以上言ってもいけないし、言葉以上の成果もいけないという。さもなくば別の弊害を生むという。

4日

「事業失敗のパターン」

事を挙ぐるに道あり。その入ること多く、その出づること少なき者を計りて、為すべきなり。

事業の成功は、出づるを計りて出づるを制す。暗君は収入ばかり計算する。これは国家でも然り。

5日

「乱弱は滅亡」

乱弱なる者の亡ぶるは、人の性なり。治強なる者の王たるは、古の道なり。

弱肉強食が生き物の実態であろう。

6日

「公義と私心」
1.

明主上にあれば、人臣私心を去って公義を行い、乱主上にあれば、人臣公義を去って私心を行う。 臣下には本来、公義と私心あり。
7日

「公義と私心」2.

公義とは「身を修むること潔白にして、公を行い正を行い、官におりて私心なし」

私心とは「行いを汚し欲をほしいままにし、身を安んじ家を利する」

8日

「主従関係」

君は計をもって臣を蓄―やしなーい、臣は計をもって君に事−つかーう。君臣の交は計なり。

主従関係は単なる計算で成り立つ。それ以上も以下もなしと割り切る韓非。
9日

「計算」

呉起、跪−ひざまずーきて自ら其の膿を吸う。

計算ずくで臣の腫れ物の膿さえ吸う、あくまでもドライな韓非の思考。
10日 「妻を殺す」

小信成れば大信立つ。
小さい信義が積み重なり大きな信義ができる。

妻の出自が敵方であり、その妻を殺してまで出世の道を選んだ呉起。最後は追放されている。
11日

「部下の悪事」

関市大いに恐れて嗣公を以て明察と為せり。

関所の役人を怪しいと見て、通行人に仕立てた男に役人に金を掴ませて通行し摘発した。倫理的に批判あるが韓非は確信的である。
12日

「欠点」

その人の害を免るるを得た所以は、その信を以てなり。

−きーという男は短気でひねくれ者で性格が極めて悪かった。ただ誰からも迫害を受けなかったのは信義に厚いの一点。一つだけで足りる。

13日

「仇を推挙」

外挙は仇を避けず、内挙は子を避けず。

他人を推挙する時でも仇でも避けてはならない。子供でも推挙する。真に相応しいものであれば。

14日

「出世」

勢は虎狼の心を養いて、暴乱の事を成すなり。

地位の上昇と共に次第に威張る、乱暴な言葉遣い、傲慢な態度になる人あり。これは権勢のなせる業である。

15日 「正義感」

言聴かれ事行なわるれば、師徒の勢いの如し。

一旦こうと信じたらトップであろうが。誰であろうが、何がなんでも自分の意見を通そうとする、自分の利益でなく、正義の為は厄介である。

16日

「理想的人間」

あえてその善を矜らず、功を成し事を立つるありて、しかもあえてその労に伐−ほこーらず。

バカのように見えるが成功者は普通とは違う。
17日 「不肖の子」 尭に旦朱ありて舜に商均あり。

尭とか舜のような古代聖王でも、出来の悪い子がいた。「明主は卑賤を恥じず」、能力があり法をきちんと守るならそれでいいのである。

18日 「刑」

いわゆる重刑とは、姦の利するところの者細にして、しかも上の加うるところの者大なり。

韓非は重刑主義、重刑は犯罪を一掃できるとした。

19日

「重刑」

それ重刑は人を罪せんがためにあらざるなり。

重刑は犯罪者そのものを罰するからである。

20日

「裕福の子」

およそ人の重罰を取るは、もとよりすでに足るの後なり。

大きな罪を犯す人間は、経済状態が十分よくなった後に起きている。貧乏して犯すのではない。

21日

「勝利と犠牲」

それに沐−もくーする者は髪を棄つるあり、除する者は血肉を傷―やぶーる。

犠牲を恐れては何もできない。プラスの計算ができるのなら敢行せよ。

22日

「愛情」

慈母愛すといえども、刑を振い死を救うに益なし。

家庭さえ愛情だけでは成り立たない。国が愛情だけで成立する筈はない。

23日

「トップの評価」

下君は己の能を尽くし、中君は人の力を尽くし、上君は人の智を尽くす。

個人の力量などはしれている。力より知恵が強い。優れたトップは衆の知恵を引き出す、これ上君なり。

24日

「馬力」

威勢は人主の筋力なり。

馬が馬力を失うと屠殺場、トップの威勢は全体を支配し統率する力である。

25日 「偽と虚」

偽を矜−ほこーれば長からず、虚を蓋−おおーえば久しからず。

偽りで繕ったものは長続きしない、空っぽを隠してもすぐわかる。

26日 「死力」 それ死力は、民の有する所のものなり。情その死力を出して以てその欲する所を致さざるなし。

誰にでも死力は出せるという。

27日

「トップの責任」

君臣の際は、父子の親にあらざるなり、計数の出づるところなり。

君臣の関係はドライな計算の関係だという。部下に懸命に働く要求できるのはトップが経営責任を果たせてこそである。

28日

「小人」

人君たるに楽しみなし、ただそれ言いて之に違うなし。

君主なんて別段楽しいものじゃない、強いて言えば誰も逆らわないことかな。これは小人の言である。

29日

「悪口を言え」

かの過行の如きは、これ細人の識る所なり。

人の悪事を告げるのは悪事を憎む点で君主の立場と共通する。

30日 「事は密かに」

事は微巧を以て成り、疏節を以て敗る。

事は密かに巧みに行ってこそ成功、粗雑なら失敗する。

31日

「口の巧い人間」

往世の主、人を得て身安く国存する者あり。人を得て身危うく国亡ぶ者あり。

人材次第で組織は左右される。口の巧い人がトップの側近にいると組織の滅亡に繋がる。