現代アメリカ資本主義に要注意ーー新生銀行問題

今回の問題には、もっと深い要因分析が必要ではないでしょうか

(1)宮沢大蔵大臣の就任と政策判断

個人的には宮沢さんを国際的識見ある方だ良識派と尊敬してきました。しかし、「平成の**** 」とおだてられ、いわば看板的に大蔵大臣を要請され、しぶしぶ引き受けられました。(私が彼はボケたと思ったのはこの時です。私はがっかりしました)
日本財政の危機的状況を立て直すには、気力も体力もご無理だのに、それをご承知で引き受けられた芯の弱さが、党利党略に利用されたと思います。老人を担ぎ出した方も、担がれた方も、その責任は重いと思います。「あれはいやいやだったんだ」「まあ仕方がなかった」という言葉では片付かないでしょう。
ここにも「ノーブレス・オブリージ」の欠如があります。スリー・スコア・アンド・テン(人生70歳)という聖書の言葉や、欧米の慣行を知らない方ではないはずですが、首相から議員引退を要請されるまでは、自ら進
退を決めなかった優柔不断さは、ご在任中の政策判断にも反映されたのではないでしょうか。

(2)なぜタックス・ヘイブン(租税回避地)の企業に売却したのか。

大蔵省(現財務省)は、日本企業の子会社が、タックス・ヘイブン(租税回避地)でペーパー・カンパニーを設立し、海外収益を留保することには目を光らせて、その利益にも課税をするように努力していると思います。
日本企業の上場利益を得る外資企業が、租税回避地の登記ゆえに課税権が及ばないというのであれば、日本企業が租税回避地で得る利益にも課税できないはずです。この点外資に甘い不公平な措置にならないでしょうか。

また、大蔵省は日本企業がタックス・ヘイブン(租税回避地)で大きな利益留保を行うことは基本的には脱税行為だと不快感を持っていると思います。それならば、なぜ大事な銀行を課税権の及ばないというタックス・ヘイブン(租税回避地)の外資に救済させたのでしょうか。企業を再生させたら再上場となるシナリオは分かっていたと思います。そうなることと予想されながら、手を打たず被害が生じたのは「未必の故意」にならないでしょうか。

(3)商道すたれたか、日本の財界

日本の財界は戦後の設備資金必要時に、長銀の長期設備融資で息を吹き返しました。長銀は金融債を発行し、これを都銀・地銀が保有し、日本の経済は円滑に資金の還流と効率投資のシステムが出来ていました。国民は、このような都銀地銀の果たした貢献や、長銀の役割を忘れてはいけません。
バブル経済の責任問題はさておき、経営に失敗した長銀を日本の財界が支援できなかったことは、まことに情けないことでした。直接の非は長銀の経営者の経営判断にありますが、日本政府があれだけ公的資金(つまり”国民の血税”)を投入したのですから、どこかの企業あるいは企業連合が侠気を出してもよさそうですが、それも実現しませんでした。本当に日本の財界も忘恩になったのかと思いますが、それぞれの台所も大変なのでしょう。商道すたれる日本経済の将来が危惧されます。外資に売る前に、もっと打つべき手はなかったのでしょうか。

(4)現代アメリカ資本主義に要注意

戦後のアメリカは民主主義を標榜して、自由競争の市場経済・資本主義を推進してきました。戦後の世界経済の発展に寄与してきたことも事実です。しかし、昨今のアメリカ資本主義は、デリバティヴ(金融派生商品)に代表されるようにマネーゲームに変質してしまいました。私たちの学んだケインズやサミュエルソンの経済学ではなく、投機資本主義で、それが政治的軍事産業に及んでいます。アメリカ資本の介入には要注意と思います。  平成16年2月4日 古鞍馬天狗