美しい日本の歌・歌・歌・歌 平成16年2月
古都・京都はやはり千年の重みがある。心に残る名勝が多い。過去に訪ねた所を中心に詩歌で綴って見たい。
1日 | 西芳寺ー苔寺 | 月明かり地ににほふとき苔にほふ | 水内鬼灯 | 若いときに憧れて訪ねた思い出多し。 |
2日 | 嵯峨野 | 子規大竹原をもる月夜 |
松尾芭蕉 |
子規はホトトギス。優美な嵯峨野は京都らしい。 |
3日 | 嵐山 | 新涼や雨風晴るるあらし山 |
青木月斗 |
雪月花も水の流れも紅葉も嵐山には華やぎがある。 |
4日 | 嵯峨野 | 子規大竹原をもる月夜 |
松尾芭蕉 |
子規はホトトギス。優美な嵯峨野は京都ならでは。 |
5日 | 落柿舎 | 寒菊に去来とのみの墓小さし |
神保朋世 |
わび住いらしく小さな墓が故人を偲ばれる。 |
6日 | 龍安寺 | 斑猫の石より石へ渡りけり | 坂東蓑助 | 斑猫―はんみょう、石庭の中、絵画的。 |
7日 | 高尾 | 時雨るるといへど三尾は暗からず |
粟野青畦 |
槙尾、栂尾、高尾の三尾。山中でもやはり洒落ている。 |
8日 | 愛宕山 |
夏はやき愛宕の茶屋の蓬餅食べて山を下り来しかな |
吉井勇 |
かなりきつい登山である。どこからも見られる愛宕さん。 |
9日 | 光悦寺 | 光悦寺砂にまじりて濡れている松の落葉をすがしみ拾う | 太田水穂 |
静寂な空気のこの地は鷹峰を背景にさすが芸術家の住まい。 |
10日 | 糾の森 |
糾の森かみのみたらし秋澄みて檜皮はひでぬ神のみたらし |
長塚節 |
素晴らしい森が大都会の真ん中。森の中の神の前で裁判するのが常で、タダスからの名前と聞く。昔人は命名がうまい。 |
11日 | 修学院離宮 | 掛稲のうへの紅葉は上の茶屋 |
富安風生 |
雄大で質素で清潔華麗な離宮には感動した。 |
12日 |
大原 |
大原や日もすがらなる冬がすみ |
小塙徳女 |
平安哀史をすぐ思う情緒が大原にはある。 |
13日 |
貴船 |
いつまでもとまらぬ蝶や貴船道 | 池内友次郎 | 夏の清涼だが、今や俗化が激しい。 |
14日 | 鞍馬 | 侘しさに貝吹く僧よかんこ鳥 | 宝井其角 |
遮那王義経を思いだし天狗と大古木杉を連想する。 |
15日 |
峯定寺 |
峯定寺の石階けわししじみ蝶 |
白川敬太 |
閑寂幽邃の地にある。懸崖の上の舞台作り。 |
16日 |
比叡山 |
四明嶽を登ると汗はにじめども若杉の根に残れる雪あり |
川田順 |
汗をだして登山した雪道を思い出した。 |
17日 | 銀閣寺 |
竹林のおくに斑雪の銀閣寺庭しづやかに山にむかへる |
中村憲吉 | 京都はやはり金閣・銀閣が目玉みたい。 |
18日 |
法然院 |
こころ和み時に求めて来ませしとぞここに法然院の夏蝉はやし |
林静子 |
なぜか心惹かれ、静かな心落ち着く幽邃の場所。 |
19日 | 南禅寺 | 眠る山にかへる雲あり南禅寺 |
高浜虚子 |
湯豆腐だけではない、大門は心を安堵させる。 |
20日 | 知恩院 | 時鳥あれに見ゆるが知恩院 |
夏目漱石 |
菩提寺の本山であり先祖を分骨安置、奥の院にお参りもする、八坂を通りぬけて。時鳥―ほととぎす。 |
21日 |
八坂塔 |
ふと仰ぐ八坂の塔や今朝の月 | 城 昌幸 | 加茂川西岸から見える。 |
22日 |
清水寺 |
石だたみぬれて二人を映しつるそは宵なりき清水の雨 |
木下利玄 | 石畳と雨は良く似合う。 |
23日 |
金閣寺 |
金閣の池のほとりをわがゆけば紅いふかし梅もどきの実 |
新村出 |
中々の名庭園だ。華やぎがあり観光客が多い。 |
24日 | 加茂川 | しくしくと涙ぐみたる灯がふたつとけつもつれつ水に流るる |
竹久夢二 |
加茂川の上流、賀茂神社あたりの風情も中々で本当にこの川には叙情がある。戦乱の時代には多くの人の血も流れたであろうが。 |
25日 |
高台寺 |
黄昏や萩にいたちの高台寺 | 与謝蕪村 | 古い土塀と霊屋に記憶がある。 |
26日 | 祇園 | 春寒の花見小路は灯しけり |
長田幹彦 |
京都の夜は知らないが何か余韻が伝わってくる。 |
27日 | 堀川 | 堀川や家の下行く春の水 | 炭太祇 | こんな情緒はいいなあ。 |
28日 | 東寺 | 塔ばかり見て東寺は夏木立 |
小林一茶 |
ここは朝市を思い出す。 |
29日 | 宇治 | 宇治川の瀬瀬のしき浪しくしくに妹に心は乗りにけるかも | 柿本人麻呂 |
やはり歌聖だけはある。格調が違う。 |