日本、あれやこれや@ 平成16年5月1日新連載
日本歴史というのでもない、風俗というのでもない、伝統だけでもない、日本人独特の素晴らしいものがあるのに、現代人は知らない。欧米文化に洗脳されてしまい日本の真の良さに気付かない。もとより、とても網羅できないが、息長く探索して行きたい。

平成1651日  徳永圀典

1日 江戸は世界一美しい都市であった。 1609(慶長14) 当時の世界的覇権国であるスペイン人ピペーロは日本見聞録に「江戸の市街はスペインの市街より勝り、家の内部も遥かに美しい」と。当時の宣教師フェリスは東洋書簡集に「ヨーロッパのどの都市よりも東洋のどの町よりも江戸の町は美しい」と書いている。

江戸市民は朝起きると自分の住む町を大切にして自分の家の前を掃いた。町を大切にした連帯感であり自発的行為である。これが昔からの日本人の姿だ。

2日 江戸時代から世界一の教育国 日本人の識字力は世界一である。これは江戸時代の農民は字が読めたことからの伝統である。当時では世界的に珍しい。

生活の為に読み書きは必要であった。絵暦・絵心経・絵地図などある、現代人でも読めぬ字がこれらにある。

3日 藩校・寺子屋 藩校は現代ではさしづめ国立大学で各藩のエリート養成。現在、国立大学は99校あるが幕末には250の藩校があったからそのレベルと普及の高さが想像できる。一般庶民は寺子屋だが、これが驚く無かれ1万と言う。

この教育熱意が明治維新以降現代まで好影響を齎し戦後の大繁栄に貢献した。現代は書物を読まない青少年が多い、未来の日本が予見でる。親の躾が悪い、子供教育の責任は親であり学校ではない。

4日 米の品種改良96種類

江戸時代の400年前、既に米の品種改良により96種類あった。日本最初の農法の書である、「親民鑑月集」にある。

意識的に改良した一般庶民である、農民のレベルの高さは欧米なんかには負けない日本人の基本的資質の高さを証明している。

5日 日本の味とは「醤油」 世界的な調味料となっている醤油はグルタミン酸とアミノ酸の味である。酵母菌の作用による発酵でウマミを出す化学作用を伴う。

醤油の味とは「うま味」。うま味とは、英語も中国語にもない。それは日本人らしい感覚的な言葉で、甘い、酸っぱい、塩辛い、ピリッと辛い、苦いの五味といわれる。

6日 ソースと醤油の決定的な違い 本質的に全然違う。ソースは単に甘いとか辛いとか酸いとかピリッと辛いといった味をつけるために色々な食品を物理的に加工しただけの無頓着なもの。 醤油の酵母菌の発酵作用が無い。日本の特徴は漬物・酒など酵母菌である。
7日 懐石料理と器 料理を乗せる器、寺院料理は円型に揃える、懐石は、扇型、花型、魚型とあらゆる型がある。

ヨーロッパの皿が花型になつたのは19世紀。日本では平安時代からある。桃山時代には菊型、江戸時代には舟型、刀の鍔型、十字型も現れた。日本料理は「見る」感覚も動員する。フォークを使う欧米人は丸型の皿だけ、箸は繊細に器の隅まで使えるから器の形は千差万別にある。

8日 日本食と含め煮 日本食は、今や世界的にその価値を認められ健康食品とされている。然し含め煮がありこれは西洋料理の発想にはない。

含め煮は、素材そのものの持つ味を消さないものである。蕗のとう、のほろ苦さを生かす調理法と結びつく、長い経験が必要。

9日

伊勢神宮、皇居とベルサイユ宮殿

ベルサイユ宮殿はブルボン王朝が帝王の権力の極限の時期に建築した、非常な装飾、金銀、宝石の彩色があり西欧文化の特色たる絢爛豪華である。伊勢神宮は、清楚、簡素、装飾性のない自然と風土がマッチした厳粛がある。皇居と同じ

成金ほど飾り立てる、世界歴史、五百年の成金と2千年の歴史ある長者の風格の違いだが、国民性の本質も如実に現している。

10日

江戸っ子とお祭り好き

徳川家康が江戸に築城した天正18年、1600年の人口は2千人。元禄時代1688年―1704年で約80万人、文化・文政の1804年―1830年で約100万人、幕末で120万人。みんな他国者の集まり。連帯意識を強めるのにお祭りが大きい役割を果たした。

これが江戸っ子だい!のプライドに昇華して行きた。ちなみに江戸の三大祭りは実は四つある。日枝山王神社は江戸城の西南を守る、湯島の神田明神は東北の鬼門を守る。浅草の三社権現、次に深川八幡である。

11日 江戸時代に一揆が無かった 幕末の混乱期を除き江戸300年に一揆がなかつた。家康は飢饉、火事にはお救い米とか行政的な配慮が行き届いており徳川家は味方と思い支持された。

暴動、即ち一揆の無い、大きい理由はこの祭りと言われる。民衆の横の連帯意識の上に、同じ氏子の立場で将軍家のタテの関係の連帯意識が複合した。

12日 三十三間堂は七百年びくともしない直線

三十三間堂は1265年、後鳥羽上皇再建、見事な直線廊下128米である。この直線は現在でも少しも狂っていない。大地震、台風にも微動だにしていない。

地盤は永年には陥没する、だから固めて固定しないで、地盤が動くように地面を粘土や砂利など弾力性のある土壌で固め、地震エネルギーを放散させ、動いても元に復元するからである。

13日

日の丸弁当の不思議

日の丸弁当は超合理食品、99パーセントが米、あとは梅干だが、低カロリーと思うのは科学を知らぬ人、胃袋に入ると梅干が米の酸性を中和して米のカロリーは食べたものが殆ど吸収される。

食べてすぐエネルギー化する、労働食としてカロリーを摂取するには理想食。勿論ビタミンは別途必要。

14日 味の人種別分類

欧米人は四味、中国人は五味、日本人は六味である。「甘い」「酸っぱい」「塩辛い」「ピリッと辛い」が四味。中国人は、これに「苦い」を足して五味。日本人はこれに「うまい」を足して六味である。

日本人は感性が高く、且つこまやか、知能程度も高いと知るべきである。

15日 タクアンは優れもの

優れた発酵食品で消化促進に良い科学的食品とされている。漬物には色々な雑菌、特に酵素が多量に含まれており胃の中で他の食品を消化分解する作用が強い。

色素はウコン、古ければ古いほど良いとされる。

16日

石垣の粗積み

石垣が崩れない秘訣は粗積みにある。西洋のそれと違う、日本のは隙間をあけて築いている。粗積みは水を抜くという利点、地震・波・風という力を跳ね返すことよりも、内部に吸収しながらエネルギーを分散させる事を考えている柔構造である。

西洋の合理精神よりも、日本の「非合理の合理精神」と呼ばれる知恵の典型である。

17日

こんにゃく、と牛蒡

日本人だけが食べる食品である。完全不消化品で食べても体を素通りだけだが、途中で全身のコレステロール、無機水銀PCBの有毒物が全部吸収され排泄、解毒排泄作用の最優秀食品。

こんにゃくは、98lが水分、灰分と凝固した澱粉少々だが、マンナンという薬物を含みコレステロール溶解剤である。高血圧、血管炸裂を防止する。

18日 日本語の常用語は世界一 いくら語数があるかと言えば14万語である。平凡社大辞典は収容語が72万語ある。こんな豊富な言語数を持つのは世界広しと雖も日本だけである。優秀性の自覚を。 方言・古代語・帰化語・外来語・隠語・敬語・卑語と実に多種多様で頭脳の明晰さと人間関係に注意を払うことを示している。レベルが高いのである。
19日

関東の醤油味は濃い

関西を中心とするのが薄口醤油、大豆を炒らないで蒸し、塩分を少なくしグルタミン酸ソーダやアミノ酸を同量にしてある。海が近く塩分は薄めでよかった。中部日本を中心とする溜醤油、大豆を炒って黒みをつけながら濃く搾ったのが溜醤油。

東日本を中心とするのが濃口醤油、塩分を強くして黒みを特に強くした醤油。山地は塩が無く塩分を強くしてあるのが特徴で関東醤油の発祥は信州などの山地であった。

20日

敬語と卑語

相手に敬意を示す為に卑語、「私たち・・」のたちは「公達」のたちで、これは敬語である。「私ども、私ら」と言うべき。

人間関係で相手の人格に対する尊重と尊敬の為に生まれた日本の卑語、世界にも稀である。

21日 ブスとは不美人 ブスの語源はトリカブトからきている。毒のあるトリカブトだが、その毒を「付子―ブス」という。この毒が傷口に入ると脳の呼吸中枢が麻痺し感情や思考力を失い、無表情になった状態を付子―ブスだと言う。

それが表情の無い人、つまり美しくない人の事をブスと言うようになった。

22日

同じ釜の飯を食う

おかずを分け合う、杯を交わす、みな素朴で実のある連帯感を示している。上下のない、連帯意識の日本の伝統である。

日本には肉体的私刑はない、アメリカ開拓時代の「首つり私刑」ヨーロッパ中世の「火炙り私刑」のような残酷な私刑が日本に無いのは連帯意識と関係がある。

23日

牛と鯨との食文化

日本人は明治以前まで牛を食べない、牛は家畜で家族のように家の中で飼っていた。そんなものは食べられないのは人情である。白人は平気で食べる。

鯨の肉を食べるのを人道に反するという、実に可笑しい白人のご都合主義の手前勝手。
24日

ご飯を炊くのは日本だけ

東南アジアは蒸す、蒸すだけでは米の持つグルテンが充分でない。日本人は水を入れて炊く、炊けたご飯を其の侭にし蒸れるとグルテンを再吸収してウマミがでる。ご飯は炊けて蓋のまま置く間にウマミが出るし栄養も増える。

中国もヨーロッパもアメリカも捨ててしまう。だからパサパサした繊維と澱粉質だけのものとなる。ウマミが無い。

25日

湿気と木造家屋

木は生き物で人間の肌と同様に生きている。湿気の多い日本にマッチした家屋を発達させた。泥壁・荒壁は湿気を吸っては吐き出す呼吸の役割をしている。天井板は屋根裏との換気空間の適度な流通の為である。

畳もそうである。ガラス戸、サッシをはめるのは非常に木造住宅には不合理という事となる。

26日

お流れ頂戴

酒の杯を交換するのは、日本人の連帯意識の発露で共食信仰から来ている。上から見れば自分と同列を付与、下から見ればタテの関係を横圀の連帯に置換する意味ができる。

これは服従関係を家族的連帯意識へとアウフヘーベンしてしまう絶妙の慣習であった。

27日

一杯やると仲良しになる日本人

日本の神様はいつも明るい神ばかり、仏教には暗い仏がいる。ユダヤの神には悪神が多い。一杯どうかは、魂を分かち合い意識を共有しようという事。連帯意識の確認行為である。

これも共食信仰の連帯感である。中国は貰った杯を飲み干して底を見せて初めて連帯感が成立。日本は杯に口をつけるだけでもいい、優しいのである。

28日

浮世絵と刀

鎖国を解いて開国して白人が驚嘆したのが浮世絵と刀の技術、日本刀は白人の技術では作れなかった。ゾリンゲンのドイツの科学でも果たしえなかった。

浮世絵は西洋近代絵画の幕開けに大影響を与えた。
29日

蓑は合理性あるレインコート

元来の西洋のレインコートは獣の皮で通気性がない。戦前は線路工夫は蓑であつたが、文明国だからとゴムのレインコートを使ったら、ものの15分も蒸れて労働できなかつた。蓑は2時間はできた。

乾燥して出来た蓑は雨中でも風を通す、雨を中まで通さない。理想的なレインコートである。

30日 東大寺の大仏殿は倒れたことが無い。

世界最大の木造建築である東大寺の大仏殿は745年建立。火災で再建され、風とか地震での倒壊はない。現在の大仏殿は1692年再建だが300年の長期間に倒壊はない。

なぜか、地震や台風という人間の物差しでは計れない自然の力を予想して建築されたからと言う。

31日

千年前の日本の「性書」

男女接触の場合はリラックスせよと言う。陰陽が交わり初めて万物が新しい生命を持つ。人間もこの原理に従い,四季自然の循環するように変化をつけて生きねばならぬと懇々と具体的な親切なものである。翻訳を憚るので一部、原文披露する。

御敵家 当視敵如瓦石 自視如金玉、若其精勤当疾去其郷・・・・。