通貨は21世紀型武器であるー通貨の本質

この10年間に、日本は明白に、甚大なる国民資産を収奪された。それは先の大東亜戦争の被害の比ではあるまい。その手段は、為替と、株式と、情報操作と、そしてこれは表面には出ないが、政治的恫喝とであったと確信する。その勝利者は軍事大覇権国で、国際基軸通貨国でもあるアメリカに他ならない。その政治性を極めて高く帯びている手段が通貨である。通貨は近代戦争の強力な武器なのである。

冷戦後、気がつけば世界の金融資産の三分の一を占める金融資産大国となった日本に冷戦勝利者のアメリカが総力をあげて対日金融謀略を集中し続けたのである。元々、マネーとは虚業であり、狩猟民族の長けたものである。幕末にも日本は膨大な金の流出の被害を受けたのと同根である。敗戦後、国家の安全保障をアメリカに依存している日本の指導者は、冷戦後、分かっておりながら、合理的反論もしないまま、恫喝されてアメリカの意向に沿ったに過ぎまい。それはあの小沢一郎が自民党幹事長時代に400兆円の公共投資を約束した頃からである。かくして「第二の敗戦」により遂に日本株式会社は消滅し、多くの日本企業が市場経済の名の下にアメリカの生贄となった。かくして、日本から米国へ還流した日本や、金融緩和による、日銀のマネーが回りまわって米国資本となり再びアメリカのマネーとして日本大企業の大株主となった。今や日本の株式市場の覇権はゴールドマン・サックス初めとする外資の意のままとなっている。日本の最大のゴルフ場オーナーはいつの間にかゴールドマン・サックスとなっているのが如実な事例である。元々巧みな、彼らの情報操作で更に自在に操作できる体制となってしまった。

アリストテレスはこう言ったという。
「通貨とは、そもそも非道徳なものであり、武器を使用せずして敵国からすべてを収奪することが出来る手段である。従って、通貨は「武器のない戦争」における最大の武器である」と。

自国の安全保障を依存しておりながら、自国のみ経済・金融・為替の安定と利益を享受できないのである。結果は高い「安全保障料」を支払ったのである。ここに到るまでの責任は、政治家のみではあるまい、国家の中枢官僚もそうである。
多くの国民は、この10年前のマネー戦争が、理不尽で純粋に経済学では解明できないと知っていた。マスメディアは、そのマネー操作手法の一つでもある、「企業格付け」のお先棒まで担ぎ国民を煽動したものである。彼らは、問題の本質を遂に解明しない振りをしていたが、本当は分かっていたのであろう。

この意味に置いて、半世紀かけてEUが統合し通貨を共通としたことは世紀的大偉業で対米従属からの政治的、通貨的な米国依存の脱却を試みるものである。米国に巨大な金融資産を保有する、従順な日本は、何れ朝鮮半島が歴史と地政学に従い昇竜の中国の属領的となるのを既に見込んで韓国から米軍を撤退させるが、玄界灘が遂に幕末以来、最悪の結果となり、危険な国境ラインとなつてしまうであろう。日本は未来には朝鮮半島と対立すら予測が可能である。従順な日本を米国の覇権下に置こうとするアメリカ意図は明白である。

憲法改正もままならぬ、羊のような日本は、未来への根本的対策すらなし得ないまま、議会は、野党は、馬鹿な議会ゴツコをしている。まさに亡国的様相を呈してきた。
平成16年6月8日 徳永圀典