日本、あれやこれやA 平成16年5月1日より新連載
日本歴史というのでもない、風俗というのでもない、伝統だけでもない、日本人独特の素晴らしいものがあるのに、現代人は知らない。欧米文化に洗脳されてしまい日本の真の良さに気付かない。もとより、とても網羅できないが、息長く探索して行きたい。平成
1651日  徳永圀典

日本、あれやこれや @

1日

ブルーノ・タウトの見た伊勢神宮

1933年に来日したドイツの世界的建築家、「古き良き時代の日本」であるが本質は変わらない。伊勢神宮は日本独自文化の鍵である。

全世界が賛嘆おくあたわざる、完全な形式を備えた日本の根源――外宮、内宮、荒祭宮を持つ「伊勢」、それは恰も天のなせる如き造営物、20年ごとに造営し既に60回以上も新築が繰り返されている。・・この事実一つの中にも、何という崇高な、全く独自な考え方が現れているか。

2日

これらの伊勢の建造物は、実に簡素、それに捧げられる尊崇の念が不思議にさえ思われる。その古典的偉大さ、あの建造物は日本の国土から生い立ったのであって、いはば稲田の作事小屋や農家の結晶であり、真の「神殿」即ち国土とその大地の精髄の安置所なのである。

3日 構造は完全に澄明で曇りなく、外形がそのまま構造であるほどに開放的で簡素である。同様に香り高く美しい檜材、屋根に用いられている藁、屋上木部の末端にある金冠、そして最後には建造物の土台となっている整然たる礎石、これらの材料はあくまで純潔を極め、あらゆる点で清楚である。
4日

木材は油を施されてすらいない。このように純粋なるにもかかわらず、材料とか構造とか、純粋さの点においては他に比肩するもののないほどの均斉をもって組み合わされている。殊に外宮がそうである。

5日

一切が究極の清楚である。それは日本的形態の偉大なる神秘を、その世界に独歩の力を、その中に蔵する貴重なる結晶体として初めて現し得る高貴さである。

6日

日本の文化が世界のあらゆる民族に寄与したところのものに対して、多少なりとも心を動かされる人は、親しく伊勢に詣でねばならない。そこにはこの日本文化のあらゆる特質が一つに結晶しており、それゆえに単なる国民的聖地より以上の何ものかが見出される。

7日

ブルーノ・タウトの見た日本の美

寺院や庭園の森林

この美しい国土、その自然や寺院や庭園などよりも以上に魅惑的ならしめる所以のものは、実に生活のあらゆる事象の中に今なお生きている日本の伝統である。・・日光の杉並木、比叡山の雄渾なる杉林による自然・・森林や自然美の保護は芸術にも反映している。

8日 自然と建築の渾然

多くの社寺において、印象の美しさは建築そのものよりも、寧ろ建築が自然といかに分かち難く結合されているかという点から生じている。鎌倉建長寺・奈良春日若宮の社殿。最も本質的な日本というかたちのものがここに還元されている。

9日 生ける伝統―能―竹生島 竹生島弁天参詣や舟旅、島の女神や海神との邂逅を内容とする能の一曲で、我々は真の自然を知った。それは音楽と律動と歌と詞と衣装とが綾なす不思議な諧音であり、これらすべてが渾然一体となって、小にしては日本の織物の如く、しかも水のせせらぎや高鳴りに全体を支配された自然の芸術的表現をなしている。
10日 それは、さやぎ立つ水音、諸々の自然の声音、舟の滑り、広々とした空間や島の詩情を含み、そして気まぐれで危険で、無尽蔵な富に恵まれた大海とはまるで反対の立場にある琵琶湖である。喉を鳴らすような声の調子著しく奇異な歌いだし、それよりも一層奇妙に蛙の声のように始まり、次第に鳥の囀りに移る笛、要するにこの音楽の全貌は水の音楽なのである。
11日 例えば鼓のごとき、その変化に富んだ音階でいかに正しく抑揚づけられていることか、それはいかに長い間緊張を保ちつつ、謡と一体となって水平線に沿うた花道の演者の悠長な登場を準備しているか。一体となった七拍子のいかに印象深いことか、そして高潮に際して「ほうーのう、ほうーのう」という行進調のリズムのいかに豪壮であることか・・・!
12日 アルベルト・アインシュタイン博士 1933年来日した時の発言

「世界を驚かせた近代日本の発展は、一系の天皇を頂いていることにある」と分析し「戦いに疲れた世界が求める未来の盟主は、武力や金力ではなく、あらゆる国の歴史を抜き越えた最も古くて尊い家柄である天皇家を頂くアジアの高峰、日本である。我々は神に感謝する。我々に日本という尊い国をつくっておいてくれたことを」と絶賛した。

13日 サミュエル・ハンチントン教授 文明の衝突の著者 世界には西欧文明、イスラム文明、中華文明など沢山の文明があるが、日本は独自の文明を形成しており、中華文明のなかには含まれない。と分析している。
14日

世界最初の微分・積分発明者

江戸中期の数学者

関孝和

15日 世界初の金融デリバティブ原理の発明

金融派生商品ー近年、猛威を奮った欧米の投資手法。

江戸時代、大阪堂島の米相場商人の原理
16日

ペリーの日誌

国益の原点
ー平和ボケと格段の相違
余が艦隊を率いて歴訪したアジアの国々の中でこの日本という国は圧倒的に組織化されーwell organized―ている。異文化であるが非常に成熟している。日本人は非常に知的で好奇心が強い。それから外交というものがsnakyで非常にずるいくらいうまく、非常に戦闘的で強い。もし彼らが我々の文明に、国を開いて接するならば、驚くほど短期間に軍事的、経済的、産業的に強大な国家になるだろう。
17日 ザビエルの見た日本人 五百年前 ・・私がこれまで会った国民の中で、キリスト教にしろ異教徒にしろ、日本人ほど盗みを嫌う者に会った覚えはありません。・・大部分の者は昔の哲学者のように暮らしていて、古い時代のさる人ひどを尊敬しています。
18日

・・彼らは自然と道理に従って何ごとにも進んで耳を傾けます。・・一般にここにいる信徒は僧という者たちほどみだらなところがなく、道理に従っています。僧は言語道断の情欲の限りを尽くし、何をしても平気な顔をしています。

19日 健康の秘訣は、日本食、それも粗食。 ここに住んでいる人々は決して鳥を殺して食べたりせず、常食は野菜と米で、小麦も、魚も、リンゴも、そのほかの果物も、ここではすべて贅沢品になっています。このように大抵の者は節約しているので健康ですし、それに老人が沢山目につきます。これはうわべは欲しがるように見えても実は僅かなもので満足している証拠です。申し分ない健康に恵まれています。
20日 日本には僧は大勢います。その悪徳は周知のことですが、にもかかわらず彼らは尊敬されています。そのわけは定まった食物を断っているからです。彼らは掟によって肉類も魚類も酒類も一切禁じられているので、いつでも野菜とリンゴと米を食べています。・・彼らの寺は収入は僅かですが、食事は日に一度だけで、みな質素に暮らしていて女性には近寄らずまた自分達の迷信(仏教の事)の話を一生懸命にするので住民には随分尊敬されています。又、日本人はとても気立てが良くて、驚くほど理性に従います
21日

ドイツ生まれのロシア商人、ハインリツヒ・シュリーマンの見た幕末日本

1.役人の警備 数日の江戸の滞在でも彼らの精勤ぶりに驚かされる。彼らに対する最大の侮辱は、例え感謝の気持ちからでも、現金を贈ることであり、又彼らのほうも現金を受けとるくらいなら「切腹」を選ぶのである。―中国・韓国とのこの歴然たる相違を想起せよ。この美徳に注目を。
22日 2.日本の文明 日本人は、工芸品において蒸気機関を使わずに達することのできる最高の完成度達している。
23日 3.教育 ヨーロッパの文明国以上に行き渡っている。シナを含めてアジア諸国では女たちが完全な無知の中に放置されているのに対して、日本では男も女もみな仮名と漢字で読み書きができる。
24日 4.米 日本の米はとても品質がよく、カロライナ米よりも余程優れている。
25日 5.食事 めいめい椀を手に取り・・器用に箸を使い、我々の銀のフォークやナイフ、スプーンではとても真似のできない程すばやく、しかも優雅に食べる。
26日 6.園芸・清潔 日本人はみんな園芸愛好家である。日本の住宅はおしなべて清潔さのお手本になるだろう。日本人が世界で一番清潔な国民であることは異議の余地がない。
27日 7.平和 この国には平和・行き渡った満足感、豊かさ、完璧な秩序、そして世界のどの国にもまして良く耕された土地が見られる。
28日 8.玩具 玩具の仕上げは完璧、しかも仕掛けが極めて巧妙なので、ニュールンベルグやパリーの玩具業者はとても太刀打ちできない。高山の操り人形など当時の世界一であろう。
29日 9.ゴザ・畳 日本に来て私はヨーロッパの寝室を満たしている豪華な家具調度など、ちっとも必要でないし、それらが便利だと思うのはただ慣れ親しんでいるからに過ぎないこと、・・もし正座に慣れたら、つまりテーブルや、長椅子、ベッドとして、この美しいゴザを用いることに慣れたら、快適に生活できるだろう。
30日 10.明治初年

この時代の日本人は、西洋文明が怒涛のように輸入されたが、伝統ある国体を維持しつつ新日本を見事に開花させたといえる。江戸文化の見事さ、江戸の美は又の機会に譲りたい。