日本海新聞潮流寄稿 平成17年12月2日            

      日本の抱える大矛盾

 

「ああアメリカよ、法を曲げ正義を踏みにじった。ジョージ・ワシントン、アブラハム・リンカーン今や黄泉にて汝の非道に涙す」。

米国の青年詩人コーエンが図書館で歴史学権威ビアード博士の米国公式資料に基く「ルーズベルト大統領と第二次大戦」を読んで仰天、大統領が戦争を仕組み、無実の日本の指導者を処刑したことを心から詫びたいと来日し、巣鴨絞首刑場跡の記念碑の前で書き残した詩である。
博士はルーズベルトが周到な準備で日本を挑発した、謀略の米国侵略戦争だと痛烈に告発した。

私は
12月になると歪曲の上に成立した東京事裁判を必ず想起する。今尚、日本は国家的矛盾と呪縛に苛まれているからである。

独自の視点で整理する。
2.
@講和条約後、民間人となつた絶対権力者マッカーサー、極東軍事裁判長ウエップ、主席検事キーナンら裁判当事者はみな東京裁判は間違っていたと言った。

A多くの欧米の政治家・軍人・国際法の権威も裁判の無効を論じている。

2.処が政府、
@日本政府は事後法裁判の無効を主張しないまま受け入れ講和後も対外的に曖昧なままである。A国内法では、国会は全会一致で戦犯はないと決議し解決している。
Bマッカーサーも帰国後、上院で日本は自衛戦争だと証言。
C戦犯の呼称は国内外に法的には無いが、BC戦犯なる千数百人が敗戦直後まともな裁判を受けることなく、無実のまま現地で処刑され戦争を償っている。「言挙げせぬ日本」、遺族は奥ゆかしくて騒がないが国民は忘れてはならぬ。

3.

@現在、漸く正気になりつつある日本が、これ等はオカシイと思って少しも不思議はない。国家間で「平和と人道に対する罪」の裁判など荒唐無稽。ならば、米国の原爆・大空襲による国民数十万人殺戮、ソ連の戦後拉致
60万人こそ人道に対する大罪だが日本は謝罪を受けていない。戦争に勝ったら何をしても無罪で、負けた側だけが罪をいつまでも受け入れるのは理不尽で我慢ならぬ。
A以上に見る如く、欧米には暗黙の対日謝罪があるが、今なお日本が隣国のみに振り回されているのは政府・国会議員・メディアが断固として反論しないできたからだということになる。尊厳を以って凛然と、各国との平和条約締結で戦争は全て終了していると突き放すべきである。政府は極東軍事裁判の見解修正をしなくてはなるまい。

4.

戦争は中国も戦場にして多大な被害を齎したことは悪く、日本はその謝罪はした。日本は現中共政権と戦争をしていない。盧溝橋で中国内の反乱軍・現中共政権が日本と中華民国双方を砲撃し戦争の火蓋を切らせたのは事実、現中共に指弾されるのは釈然としない。毛沢東は日本のお蔭であり中国に謝る必要は無いとまで言ったではないか。中華民国の蒋介石は賠償を放棄、中共の周恩来も放棄した。法律的には平和条約により完全に解決済み。道義的にも中共に
20回に及ぶ謝罪をし、巨費6兆円(中国感覚60兆円)を提供する大貢献もした。賠償支払いは無いが中国に日本が残した17兆円の資産請求権も放棄した。戦後60年間の平和実績を無視し反日教育を国是とし戦前同様の日本観のままでは素直に彼らの主張は聞けぬ。彼らの政治的思惑にこそ問題の本質が在ると見るのが正論である。故に中国にその解決責任がある。

C朝鮮半島は日本国民であった。中国と同レベルで論ずるには矛盾がある。朝鮮半島にも日本の資産
8兆円を放棄した上で、植民地ではないが妙な名目で巨費を与えて今日の経済繁栄の基盤を提供した。欧米宗主国なら知らぬ顔の植民地謝罪なるものまで何度もした上、今尚、反日教育を続けているのは中国同様、彼らの政治的思惑が起因していると見るのが正当である。

5.
過去、政府・与野党政治家が毅然とせず、一部マスメディアが反日を誘導し、国益を全く顧慮しない処に問題の本質がある。国民だけが納得できない構図になっている。曖昧にしてきたこれ等を子孫に大きな問題として残したままにしてはなるまい。決断の時である。

(鳥取市)鳥取木鶏研究会 代表 徳永圀典