「日・米・中」経済なで斬り 
                  
日本海新聞潮流寄稿 平成18年3月2日

市場経済に翻弄されている日本は既に貧困率5位と米国2位に近く貧富の差が拡大中、砲弾を使わぬ経済戦争で対米譲歩ばかりに起因する。
日米合同軍事演習で対潜哨戒機の潜水艦発見能力など自衛隊員の技術は格段に米国兵より高いし牛肉検査に見る如く米国民のレベルは総じて低い。米国の政治経済を牛耳っているのは
1%に満たない富豪で、彼らは全米金融資産の36%を保有する貧富の差が激しい社会、一例を挙げれば、大企業経営者年収13億円、一般300万円。
その米国式経済を押し付けられた日本の指導者が頼りなく、企業への忠誠心、終身雇用などの発展原理を棄ててしまった。医療保険などまかり間違えば米国のように無くなりかねない。十年前、東南アジアで米国人ソロスが投機資金で各国経済金融を荒らしまわり破綻寸前にさせたことがあった。利益至上主義の貪欲、法の隙を見つけて襲いかかる悪辣、弱肉強食のゼロサムはそのまま受け入れてはならぬ。

中国は無宗教でお金が神様、加えて道義無き共産主義がやる似非資本主義、中長期的にこのまま安定的に発展する道理はない。中国は民主主義国が相容れない仕組みと思考を持つからだ。資本主義発祥の英国、その成功はキリスト教倫理が国民にあった。日本は江戸時代からの素養と、民族性である道義があり資本主義の成功は当然。資本主義には個人段階での倫理が必要、中国には皆無の上、共産党ブルジョワの独裁経済運営は間違いなく世界・人類を大混乱に導引するであろう。

先ず、環境問題、途方も無く深刻な問題が数々、時々刻々と国境を越え地球規模で拡大中。世界の石油・希少資源確保の為、テロ国家にカネを撒布、軍事力を背景に世界的乱獲行動が見られ、米中石油戦争は既に始まっており不気味な近未来が予見できる。中国の中産階級は約
2億人、まだ数億人の余剰労働力があるが資源は有限であり廉価な人件費だけの経済成長は限界が見えている。
某総合研究所の友人によると、在中国日本企業の利益は制約があり持ち帰れない架空数字の由。国家危局時には対日配慮など一切払わないであろう。僅かこれらの事例でも中国の未来には限界が早々と見える。中華思想なるものが世界の既往秩序破壊者となりつつある現実もある。思想・言論の自由が欠けた経済運営の危うさがこれから表面化し、連動して政治的軍事的圧力を他国に加圧する。

かかる中国に経団連奥田会長、同友会小林代表幹事らは商売をしやすくする為、中国に媚びて靖国参拝中止を総理に進言とは、無礼にして浅慮、民族の魂を売り日本を危険に陥れるもので見識に欠ける。新幹線売却拒否を主張する
天晴(あっぱ)れなJR東海葛西会長の識見に劣る。
英国労働党政権、大きな政府ゆえ亡国に瀕した折、サッチャーが
(おお)(なた)を振るい経済を再生した。

経済も政治も、主体性を保ちつつ進歩する慎重さが必要だが日本は余りにも米国流になり過ぎた。日本の良さを維持発展する方策が切望される。私の古巣である元住友銀行、現役時代は銀行界トップの実力があり第二位を正味実力で一兆円の格差をつけ優位にあった。バブル後苦労したのは、商売は巧いが住友家憲・倫理・教養を欠いた二名の人物を重用し過ぎたのが遠因であったと信じている。経済も政治も、運営の不易原理が確立していなくては必ず揺らぎが生ずる。

日本は悪平等のきらいがあったが経済大国であり国際的妥協も必要。
吉田松陰「鎖国の説は一時の無事であるが、
宴安(えんあん)姑息(こそく)の徒が喜ぶところのもで、始終遠大の大計ではない。一国に居ついたままなのと天下に跋渉(ばっしょう)するのとでは、人の知恵労逸(ろういつ)は狭い日本の中でもかけ離れている。まして世界に於いておや、堂々大艦を作り、公卿から列侯以下に到るまで万国を航海し、知見を聞き、富国強兵の大策を立てるべしだ」は現在でも有効。

日本も自分の道を墨守するだけではだめだが、余りにもの米国式受け入れは日本人の変質を迫るものがあり素直にこのまま受け入れ難い。
(鳥取市)鳥取木鶏研究会 代表 徳永圀典