| 1日 | 238句 | 
 
          
  | 爾 おのれの灯となれ すみやかにいそしみて 賢き者となるべし けがれをはらい 著をはなれて ふたたび 老死に 近づかざるべし | 自分自身を灯となせ。そして努め励みて賢者となるべし。このうよにして穢れを払いのけ過失をしなければ再び生まれてからの痛ましい輪廻の世界に入ることはない。 |  | 
    
      | 2日 | 239句 | 
 
          
  | 工巧者の 銀のさびを 除くがごとく かしこき人は除ろに 一つ一つ 刹那 刹那に おのれのけがれを のぞくべし | 鍛冶屋が銀の鍛錬をするように智慧ある者は、急ぐことなく順々に少しづつ少しづつ、瞬間、瞬間を絶えず自己練磨して己を磨くがいい。 |  | 
    
      | 3日 | 240句 | 
 
          
  | 錆は 鉄より生ずれども その鉄を きずつくるがごとく 不浄ある行者は おのれの 業により 悪処にみちびかれん | 鉄に生じた錆は自分自身を食い破るように守るべき道徳を踏み越えた人は自らを不幸な道に誘導する。 |  | 
    
      | 4日 | 241句 | 
 
          
  | 説呪者のけがれは 呪を誦んぜざることなり 家屋のけがれは 修理を怠ることなり 容色のけがれは 懈怠より来たる 修行者のけがれは 放逸に在り | 読誦しなくては祈祷の価値はない。手入れしなくては家屋の値打ちはない。怠っておれば美貌も落ちる。怠惰にしておれば修行にならぬ。 |  | 
    
      | 5日 | 242句 | 
 
          
  | 女性のけがれは よからぬ行いに在り 施者のけがれは 慳なり 悪行こそ この世にも またかの世にも けがれなり | 婦人の不義な行為はけがれである。むさぼりは慈悲深き人間は恥じる。まこと この世でも来世でもこのような行為は悪行である。 |  | 
    
      | 6日 | 243句 | 
 
          
  | これらのけがれより さらに多きけがれあり 無明こそは 最大のけがれなり 比丘等よ このけがれをすてて 無垢の人となるべし | これらのけがれよりも、更にけがれ多きものあり。盲目的本能こそは最大のけがれである。修業者よ、この最大のけがれを棄てけがれ無き人となれ。 |  | 
    
      | 7日 | 244句 | 
 
          
  | 烏の如く つゆ恥ずる思いなく たかぶりつよく つつしみ知らず そあらにふるまい かつ 心けがれたるもの かかる人の この世に生きんこと いと易かん | 恥知らずのカラスのように厚かましい、他人を陥れる、無礼で乱暴な言動、本能のままに生活する、このような人間はこの世は楽である。 |  | 
    
      | 8日 | 245句 | 
 
          
  | はずる思いあり つねに清白を求め 執着なく つつしみふかく 清浄の生活を いとなむもの かかる人の この迷いの世に 生きんは難し | 恥を知り常に清白の生活を願い求め、何者にも支配せられで心高ぶることもなく清らかな生活をしている人にとってはこの世は生き難いものである。 |  | 
    
      | 9日 | 246句 | 
 
          
  | ひと若し 生命あるものを害し また虚言をかたり この世にて 与えられざるを取り 他の婦女と交わり | 命あるものを損ない、不真実を語り、この社会で無理なものを取り、他人の妻と交わり、 |  | 
    
      | 10日 | 247句 | 
 
          
  | さらに又 スラー酒 メーラヤ酒 ふけりおぼれなば 彼はこの世にて おのれの 根を掘るものなり | それのみに止まらず飲酒に耽る人は、この世にいて既に自己の根を掘ることと同じ。 |  | 
    
      | 11日 | 248句 | 
 
          
  | おお 汝よ かく知るべし つつしみなきは あしきことなり むさぼりと 不法とをして ながく爾を くるしみに 陥らしむべし | おお もしお前が自ら節制することがなければ邪悪の生活となるのだと知りなさい。それは貪りと、不正で、それは絶えず苦痛を産むものだと心しなさい。 |  | 
    
      | 12日 | 249句 | 
 
          
  | 世の人は その信ずる所に随い その好む所によりて ほどこしをなす されば与えられし 飲食により こころ満たざるものは 昼も夜も 三昧をえざらん | 世間の人は自分の信ずる所に従い、或いは好む所に随い布施をするものである。他人から与えられた飲食に不満を抱く者があるなら昼夜を問わずその人は精神的な安らぎは有り得ない。 |  | 
    
      | 13日 | 250句 | 
 
          
  | ひと若し 厭かざる思いを断ち これを根だやし ことごとくつくさば 昼も夜も 彼は三昧をうべし | もし人間がこのような不満を断ち切り、根こそぎにして根絶すれば昼夜を問わず安息を得るであろう。 |  | 
    
      | 14日 | 251句 | 
 
          
  | むさぼりにくらぶべき はげしき火もなく いかりにたとうべき 執着はなく おろかさにすぎたる 網もなく 愛欲にまさる 暴流あるなし | 貪りほど激しい火はない、怒りより強い執念はない。愚かさより細やかな網はない。盲目的愛より恐ろしい河はない。 |  | 
    
      | 15日 | 252句 | 
 
          
  | 他の過失は見やすく おのれのとがは見がたし 他のあやまちをただすこと 糠をひるがごとく おのれのとがは 詐りふかき賭者の 不利のきいを かくすがごとく 自らおおいかくすなり | 他人の過失は眼につきやすく自分の過失は目につかない。これは籾殻を扇いで吹き分けるように他人の過失は見分けられるが、自分のそれは分からない。誤魔化している賭博者が悪いさいころを隠すようなものだ。 |  | 
    
      | 16日 | 253句 | 
 
          
  | ひと若し 他の過をさがし求めて つねに怒りの 心を抱かば 彼の漏は増すべし かくして漏尽を去ること いよいよ 遠からん | 他人の過失のみ探して常に腹を立てている人は盲目的本能は愈々増える。このような本能からの解脱は愈々難しくなって行く。 |  | 
    
      | 17日 | 254句 | 
 
          
  | 虚空には 道とすべきものはなく うつろなる外道に 沙門あるなし おろかなる世人は 戯論をたのしめど 如来にはかかる 戯論あることなし | 虚空に道はない。外的な生活を気にかけるのは修行者とはいえぬ。ただ多くの人々は虚ろなものに喜んでいるだけだ。真理に到達した人には最早や虚栄はあり得ない。 |  | 
    
      | 18日 | 255句 | 
 
          
  | 虚空には 道とすべきものはなく うつろなる外道に 沙門あるなし つくられたるものに 常住はなく 仏陀には 動乱はなし | 表面のみの生活では修業者は生まれない。作られた全ての現象には恒久なるものはない。悟れる者には動揺するものはない。 |  | 
    
      | 19日 | 第十九品256句 | 
 
          
  | こといそぎすぎて ものを処理するものは 法に住むあたわず 智あるものは 義とするものと 不義とするものと 二つのことを 見きわむるなり | 急ぎすぎ物事を処理すれば正しいというものではない。智者は正しい事、正しからざる事を見極めて行う。 |  | 
    
      | 20日 | 257句 | 
 
          
  | 暴力を用うるなく 法により 心を等しゅうして 他をみちびき 法に護らるる智者 彼こそ 法に住むものと いわれん | 暴力でなく正義と公平により他人を導き、自分も正義を守りかつ智慧ある人こそ、法に立脚した人物である。 |  | 
    
      | 21日 | 258句 | 
 
          
  | 多く説きたてればと そのゆえに 彼は智者にあらず こころおだやかに 憎しみの思いなく おそれなきもの 彼こそは賢き人と よばれん | 言葉を多くしたからとて賢者とはいえぬ。静安で、怨みなく、怖れなき人こそ賢者と言える。 |  | 
    
      | 22日 | 259句 | 
 
          
  | 多くを説けばとて そのことのかぎりにて 彼は法を持する者にあらず 法を聞くこと 少なくとも 身にこれを行わば 法をおろそかに せざるがゆえに 法を持する者と いわるべし | 多くの教えを説いたから、それのみでは教えの体得者ではない。ほんの少しだけ教えを聞いたけれども我が身にその教えをつけ、なおざりにしない人こそ教えの体得者である。 |  | 
    
      | 23日 | 260句 | 
 
          
  | 頭白しとて このことによりてのみ 彼は長老たらず 彼の齢 よし熟したりとも これ空しく 老いたる人とのみ よばれん | ただ白髪になったからとてそれで長老というものではない。年齢が長けてただ年老いたというだけである。 |  | 
    
      | 24日 | 261句 | 
 
          
  | 誠に諦あり 法と不害と つつしみと 自調とあり かかるこころの けがれを 除き去れる 賢者こそ 長老とよばるべし | 人生の真実・真相を知りぬき、仏の教えを心得、慈愛と自制と謙虚を身につけた、自らの心の穢れの無い賢い人こそ長老と呼べる。 |  | 
    
      | 25句 | 262句 | 
 
          
  | ただ言説うるわしとて また容色うつくしとて うちにねたみあり こころにおしみ ことば直からぬは 彼は貌よき人にあらず | 妬みが深く、貪欲で、他人をたぶらかすような人は言葉が多く巧く、容貌がいいからと言って真の「みめよき人」とは言わぬ。 |  | 
    
      | 26日 | 263句 | 
 
          
  | ひと若し かかる心の とがを断ちきり 根たやしつくし すでにこのにくみを 越えたる智者 彼こそは 貌よき人といわれん | これらの悪を断ち切って根を絶やし、絶滅し、憎しみよを越えたる智者こそが真の「みめよき人」と称さされるべきである。 |  | 
    
      | 27日 | 264句 | 
 
          
  | よし髪を剃るとも いましめなく 妄語をかたらば 彼は沙門にあらず 欲望 と むさぼりとをそえて いかでか 沙門たりえん | 自制することなく虚言を語る人は、髪を剃るだけで修行者とは言えない。ましてその人が貪欲に束縛されているならばどうして道の人と言えようか。 |  | 
    
      | 28日 | 265句 | 
 
          
  | ありとある 大き 小さき すべてのとごを 止めしひとは かかるとがを 止めしがゆえにこそ 沙門ととなえられる | 大小を問わずありとある悪事を制御できればそれだけで道の人と言われてよい。 |  |