2月13日 解説
人間味というものは案外矛盾のなかにあるものである。貧乏で客を歓待するだけの余裕がない、しかし客が好きである。老いてますます頑固で当世に合わぬ。しかも世間がいちいち癪の種である。世の中を癪に障えながら世の中に維つながれている。貧窮して本が買えない。しかし珍しい本が好きだ。こういうのは人世の有情である。
貧乏なるがゆえに客を好まぬ。老いて世にしたがう能わざるがゆえにもう世の中は御免だ。窮して本が買えぬからもう本は読まぬというのではこれは俗物である。そうではない、ことごとく逆だ。この矛盾のごときところに人間の旨味がある。 天地有情