徳永圀典の「論語」
私は、このホームページで多くの聖賢・偉大なる先人の格言・箴言を数多く引用してきた。人口に膾炙している論語だけは何故か取りあげていなかった。五年経過して漸く論語に触れたいという思いがこみあげてきた。
論語は、矢張り我々の幼少時代から日常生活の中に溶け込み、肌感覚の親しみ、或いは血肉となっているように思える。色んな解釈があっていい、然し、何か悩みがある時、難問・難題に直面した時、年齢に相応したヒントが与えられるのも論語ではなかろうか、かみ締めるような含蓄
気の向くままに、日々の制約も無しに、順序も立てないで、楽しみつつ取りあげてみたい。それが論語の道に適うか。
平成19年2月13日
子曰く、学びて時に之を習う。 亦説(悦)ばしからずや。 朋 遠方自り来たる有り。亦楽しからずや。 |
子曰、学而時習之。不亦説乎。 有朋自遠方来。不亦楽乎。 人不知而不チ。不亦君子乎。 |
不遇な時でも学ぶ事を忘れないで続ける、復習する、なんと楽しいことだ。 突然友人が遠い所から訪ねてきた、懐かしくて温かい気持ちになる。 |
子曰く、巧言令色、鮮し仁。 |
子曰、巧言令色、鮮矣仁。 |
人当たりが良すぎて言葉も巧みなのは本物かどうか疑わしい。 |
子曰く、剛・毅・木・訥は仁に近し。 |
子曰、剛毅木訥近仁。 |
物欲に左右されない、信念もある、飾り気がない口下手、こんな方が真実の人か。 |
子曰く、君子は義に喩り、小人は利に喩る。 |
子曰、君子喩於義、小人喩於利。 |
知性と教養ある人は道義・道理を基本とする。素養の欠けた人は損得だけで考える。 |
孔子曰く、益する者の三友あり、損なう者の三友あり。直なるを友とし、諒なるを友とし、多聞なるを友とするは、益するなり。便辟なるを友とし、善柔なるを友とし、便佞なるを友とするは、損なうなり。 |
孔子曰、益者三友。損者三友。友直、友諒、友多聞、益矣。 友便辟、友善柔、友便佞、損矣。 (季氏編・四章) |
自分にとり有益な三種類の友人、三種類の有害な友がある。 有益な友とは、正直な人、義理堅い人物、博識の人間である。逆に有害な友人とは、おべっかをいう人、表裏ある人、口先の巧みな人だ。 |
子曰く、君子は食に飽くるを求むること無く、居るに安きを求むること無し。事に敏に、言に慎み、有道に就きて正す。学を好むと謂う可きのみ。 |
子曰、君子食無求飽、居無求安。敏於事、而慎於言、就有道而正焉。可謂好学也己。 (学而編・十四章) |
理性と教養の人間は腹一杯食べたり、豪奢な住まいをしない。なすべき事は機敏にこなすが、言葉少く出しゃばらない。疑問あれば、その道の人を訪ね正してもらう。このような人こそ好学の士というのだ。 |
やはり論語の順序により初めから取り組む。掲載したものは省略する。 | 学而編の冒頭は初回分にあるので本日は二回目から。 |
学而編・第一 |
有子曰く、その人と為りや高弟にして、上を犯すことを好む者鮮し。上を犯すことを好まずして、乱を作すことを好む者は、未だこれあらざるなり。君子は本を務む。本立って道生ず。高弟なる者は、それ仁をなすの本か。(学而編・二) |
有子曰。其為人也孝弟而好犯上者鮮矣。不好犯上。而好作乱者。未之有也。君子務本。本立而道生。孝弟也者。其為仁之本與。 |
父母は孝、年長者は弟、上を侮辱しないのが根本、それにより本が立つ。根本がしっかりしておれば枝葉が繁茂するように仁の道は自ずから生まれてくるものだ |
曾子曰く、吾日に三たび吾が身を省みる。人の為に謀りて忠ならざるか、朋友と交わりて信ならざるか習わざるを伝うるか。 |
曾子曰、吾日三省吾身為人謀而不忠乎。與朋友交而不信乎。伝不習乎。 |
自分の行ったことを毎日幾度となく反省している。人の為に充分心を使ったか、交友に言行不誠実はなかったか、師の教えを復習したかと。 |
子曰く、千乗の国を道むるには、事を敬して信じ、用を節して人を愛し、民を使うに時を以てす。 |
子曰、道千乗之国。敬事而信。節用而愛人。使民以時。 |
一国を治めるには慎重に政治を行い、民に安心と信頼させ、無駄な費用を使わず政策実現には時を選ぶべし。 |
子曰く、弟子、入りては則ち孝、出でては則ち弟、謹みて信、汎く衆を愛して仁に親しみ行いて余力あれば則ち以て文を学べ。 |
子曰。弟子入則孝。出則弟。謹而信。汎愛衆而親仁。行有余力則以学文。 |
家では父母、外では年長者や有徳の人を恭愛、行いは常に誠実、時間があれば聖賢の書に親しむ、これが模範的な人間の道であろう。 |
子夏曰く、賢を賢として色に易え、父母に事えて能く其の力を竭し、君に事えて能く其の身を致し、朋友と交るに言いて信あらば、未だ学ばずと曰うと雖も、吾は必ず之を学びたりと謂わん。 |
子夏曰。賢賢易色。事父母能竭其力事君能致其身與朋友交学。吾必謂之学矣。 (学而編・第七) |
賢徳の師を恰も女色を好む心で尊敬する。父母には力ある限り尽くす。君主には余念無く忠節に仕え、朋友には誠実を旨とし有言実行、このような人が謙遜して、自分には学問はないと言ったとして私は、断じて言う。それこそ学問を身につけた人だと。 |