221日 見在の身解説

 何という美しく清い深い味のある詩であろう。石湖は南宋紹興朝の進士で勝れた田園詩人である。湿気や寒さが厭さに門を出ない。一冬中、冠頭巾をきちんとつけるようなことをせずに、のん気に暮らしておる。見なれた月であるが、雪が積もってからは、来る夜も来る夜も皆奇景だ。梅花の咲く処、また別趣の春を覚える。手燭をとって二階に登り何らもならぬ昔話をくり返し、炬燵にあたりながら、その情味というものは、今更何の新奇を求めようか。栄華だの勢利だのとそんなものはとても人には敵わない。いつも負けておるのが習慣だ。もうけたものは酒に対する現在のこの身である。           百朝集