慈悲

慈悲を縮めていうなら悲、そこでその至極のものが大悲(だいひ)観音(かんのん)悲母(ひぼ)観音(かんのん)でありまして、母の母たる至極の感情は、子を悲しむことであります。そこで愛という字をかなしむ(○○○○)と読むのであります。 

愛は悲しい。楽しい愛というのはまだ愛の究極ではなく、本当の愛は悲しい。

ですから愛の化身(けしん)である母は常に悲しむものであります。

子供が病気をしたと言って悲しむのは当たり前ですが、子供が出世をした時でも、母は「あんなことになってどんな苦労をするだろうか」と悲しむ。

人が喜んでいる時に母は悲しむ。

これが本当の慈悲であります。だから慈愛より慈悲の方が深刻な言葉、本質的な言葉であります。

安岡正篤先生の言葉