2月8日 文化の没落は早い 

 文化というものは非常に注意し、反省し、これを正養しないと、案外早く頽廃没落することです。個人の私生活も民族生活も同じことです。案外長く保たぬものです。人間は成功しようと思って皆あくせくするのですが、次第に成功するに従って非常に早く駄目になるものであることは残念ながら我々にとって今日でも事実であります。よく口の悪いのは「名士というのは無名の間が名士であって、いわゆる名士になるに従ってメイは迷うという迷士になる。そのうちだんだんに冥の冥士になる」などと皮肉に申しますが、まうそういうもので本当は無名にして初めて有力であります。有名は、つきつめた意味で言うと案外無力になる。これは歴史のしからしむる事実であります。

 そこで、いかにして野生―野生という言葉に弊害があるなら、素朴性・真実性というものを維持するかということ、これが先ず第一に文明と民族の大事な問題であります。第二に、あまり不自然な都会化しない、近代的大都市化しない、できるだけ野生的素朴地帯を存置するということです。素朴の世界というものを出来るだけ保存するということです。そのいずれにも、日本の今日は残念ながら非常な邪道に入っておるわけであります。