2月9日 松陰
松陰の生涯の艱難流離を看来って、其の間の学問文章に注意すれば、我々は殆ど彼が倦むことを知らぬ熱心に感嘆せざるを得ない。九州漫遊の旅に、東北亡命の間に、或いは又獄屋の裡に、彼は寸陰を惜しんでかつ読みかつ認めた。しかも其の始終を通じて小児の如き純心が躍動して居る。
その他書簡文章随処に、自ら書を楽しむのあまり、溢れて之を他に分たんとする熱情に触れることが出来る。彼の如くにして初めて読書は精神の糧である。かの職業の為-社交の為-好奇の為の読書は卑しむべきかな。 日本精神の研究