強い日本は「一身独立して一国独立す」から

                         施政方針演説安倍晋三首相2013.2.28  

 1 はじめに

 「強い日本」。それを創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です。

 「一身独立して一国独立する」

 私たち自身が、誰かに寄り掛かる心を捨て、それぞれの持ち場で、自ら運命を切り拓(ひら)こうという意志を持たない限り、私たちの未来は開けません。

 日本は、今、いくつもの難しい課題を抱えています。しかし、くじけてはいけない。諦めてはいけません。

 私たち一人一人が、自ら立って前を向き、未来は明るいと信じて前進することが、私たちの次の、そのまた次の世代の日本人に、立派な国、強い国を残す唯一の道であります。

 「苦楽を与(とも)にするに若(し)かざるなり」

 一身の独立を唱えた福沢諭吉も、自立した個人を基礎としつつ、国民も、国家も、苦楽を共にすべきだと述べています。

 「共助」や「公助」の精神は、単に可哀想(かわいそう)な人を救うことではありません。

 懸命に生きる人同士が、苦楽を共にする仲間だからこそ、何かあれば助け合う。そのような精神であると考えます。

 2 被災者の皆さんの強い自立心と復興の加速化

 「みんなで声を掛け合って、励まし合っている」

 総理就任以来、私は、毎月、被災地を訪問し、避難生活を強いられている方々の声を直接伺ってまいりました。

 仮設住宅の厳しい環境の下でも、思いやりの心が、そこにはありました。自立して支え合おうとする気概を感じるのです。

 一方、個人の意志や努力だけではどうにもならない問題が、いまなお立ちはだかっています。高台移転は、ようやく動き始めたものの、土地の買収や、さまざまな手続きにより、大幅な遅れが目立ちます。

 仮設住宅暮らしの長期化による、先の見えない不安。お年寄りの方からは、「時間がない」という悲痛なお話も伺いました。

 「どんなに小さくてもいいから、自分の家に住みたい」

 今を懸命に生きる人たちに、復興を加速することで、応えていかねばなりません。解決すべき課題は、地域ごとに異なりますが、復興庁が、現場主義を徹底し、課題を具体的に整理して、一つ一つ解決します。

 福島は、今も、原発事故による被害に苦しんでいます。子どもたちは、屋外で十分に遊ぶことすらできません。除染、風評被害の防止、早期帰還に、行政の縦割りを排し、全力を尽くすべきは当然です。しかし、私たちは、その先にある「希望」を創らねばなりません。

 若者たちが、「希望」に胸を膨らませることができる東北を、私たちは創り上げます。それこそが、真の復興です。

 既に、再生可能エネルギー産業や医療関連産業など、将来の成長産業が東北で芽吹きつつあります。復興をさらに強力に進めるため、復興予算19兆円枠を見直し、必要な財源を確保することとしました。

 今年も、間もなく3月11日がやってきます。厳しく長い冬が続いた東北にも、もうすぐ春が訪れます。冬の寒さに耐えて、春に咲き誇る花のように、「新たな創造と可能性の地」としての東北を、皆さん、ともに創り上げようではありませんか。