韓国は信用出来ない

裏切られた韓国への信頼

2014.2.28  産経新聞

 「河野談話」の根拠となった韓国での元慰安婦16人の聞き取り調査について、当時の事務方トップである石原信雄元官房副長官が20日の衆院予算委員会で「事実関係の裏付け調査は行っていない」と証言するのを聞き、内心忸怩(じくじ)たるものがあるのだろうと推察した。

 石原氏は聞き取り調査について、こう強調した。

 「韓国側に対して『客観的に過去の事実を話せる人を選んでください』といい、『(韓国側は)責任を持って選びます』ということで、聞き取り結果を踏まえて河野談話になった」

 「韓国側の善意を信頼して全体の作業を行った」

 石原氏は24日に東京都内で行った講演では「(政府内で)元慰安婦の話を聞くかどうかが大きな論争になった。正しく公正に話してくれるかが問題になった」と明かし、こう続けた。

 「韓国側は『反日運動をやっていた人や、バイアスのかかった人は排除して、真実を語る人を選ぶ』ということだった。その前提で韓国を信頼する形で聞き取り調査を行った」

 「その前提条件に問題ありとなれば、何をか言わんやだ」

 ならば、韓国側が責任を持つと約束したはずの元慰安婦の人選と、聞き取り調査の実態はどうだったか。

 おさらいすると、産経新聞が入手した聞き取り調査報告書によると16人中、氏名すら明確でない者が3人いて、生年月日が記載されているのは半数の8人にとどまった。その生年月日すら、別の調査やインタビューには全く違うことを述べている者もいる。

 朝鮮半島で重視される出身地についても大半の13人が不明・不詳で、大阪、熊本、台湾など慰安所がなかった地域で働いたという証言もある。その上、日本で慰安婦賠償訴訟を起こした原告が5人も含まれる。

 この点は聞き取り調査を行った担当官も気づいていたらしく、調査報告書にも「訴訟では原告C」などと注意書きもしてあった。

 また、調査が行われた場所は韓国政府の公館ではなく、太平洋戦争犠牲者遺族会という反日的な民間団体の事務所だった。この遺族会は慰安婦賠償訴訟の母体でもあり、しかも、訴訟の原告側弁護士である福島瑞穂氏(社民党前党首)がオブザーバーとして聞き取り調査に加わっている。

 さらに、この遺族会幹部は慰安婦問題に火をつけた3年8月の朝日新聞の誘導記事「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く」を書いた記者の義母に当たる。

 こんな人選や調査が石原氏のいう「公正」や「真実」に値するだろうか。

 一方、河野談話発表翌日の5年8月5日付の朝日新聞はこう書いている。

 《聞き取り調査が終わった7月30日夜、ソウルで田中耕太郎・内閣外政審議室審議官は「(元慰安婦の)記憶があいまいな部分もあり、証言の内容をいちいち詳細には詰めない。自然体でまるごと受けとめる」》

 つまり、当時の宮沢喜一内閣はただ早期の政治決着を急いでおり、事実関係の追及や真相の解明など二の次だったのだろう。そうした安易な姿勢を韓国側に見透かされていたのだ。

 当時の外政審議室幹部は河野談話発表から数年後、同室後輩にこう語った。

 「振り返って、3年12月の慰安婦訴訟提起からの一連の流れをみると、意図的な動きを感じる」

 まさに何をか言わんやである。(阿比留--政治部編集委員)