概念的論理的知識に豊かな直感を 

陽は造化の活動し、表現し、分化し、発展するエネルギーである。然し、これに偏すれば、活動は疲労し、表現は貧弱になり、分化は散漫・分裂し・発展は衰滅する。これを救うものは陰のエネルギーである。 

これは順静・潜蔵・統一・調節の作用をする。この互性が働いて始めて新しい造化が行われる。それを「(ちゅう)す」という。 

物は全て陽に向うが、陰を待って、始めてよくその全体性・永続性を得る。故に、造化を我々の歩行に徴して「道」と言えば、陽は道の用であり、陰は道の体である。 

人間の心身も過労すると酸化する。酸を(いた)むと()むのはえらいものである。酸敗、心酸などという古語に頭が下がる。 

健康の時、体内は弱アルカリ性である。人間精神も、知性は陽性である。物を分つ、ものわかりである。認識とは物の区分・区別をはっきりさせることである。 

それによって概念を得る。その分化を発展させる手段が論理である。だから概念的・論理的、つまり理屈になるほど、根幹・全一・生命から遠ざかる。中味が無くなる、くたびれる。 

概念的論理的知識は豊かな直感に基づかねば浅薄であり危険である。 

    安岡正篤先生