(ただす)の森

(ただす)の森かみのみたらし秋澄みて

   檜皮(ひはだ)はひでぬ神のみたらし  長塚 節 

下賀茂神社の社前の森を糺の森という。中々いい語感である。

夏目漱石の「京に着ける夕」にある、

――暁は高い(けやき)の梢に鳴く鳥で再度の夢を破られた。

・・・かくて太織(ふとおり)蒲団(ふとん)を離れたる余は(ふる)へつつ窓を開けば、依然たる(さい)()は濃かに糺の森を()めて、糺の森はわが家を(めぐ)りて、わが家の寂然たる十二畳は、われを封じて余は幾重ともなく寒いものに取り囲まれていた。・・・・・
 


神前の森の中で裁判をするのが古代の常であろう、糺すのである。

古木が茂り夏も涼しく、これが大都会の中にあるのは祖先に感謝していい素晴らしいものであり私はとても憧れるし好きな森である。

          

                  岫雲斎圀典