国家の「タガ」 山川静夫 エッセイスト 

真山青果の「元禄忠臣蔵」の中に、こんなセリフがある。

「桶というものは、タガ((たが))がありゃこその桶で、そのタガがなければ、単なるバラバラの板キレだ。その板キレで水を汲もうとしても無理な話だ」。 

今の日本は、まさにタガを失った桶の状態で、バラバラの板キレだ。その板キレによって政治の危機をのがれようともがいているに等しい。 

民主党は政権与党でも、桶に例えれば一枚の板キレだ。それぞれの野党も板キレだ。

国家の進路をみんなで協力して考える姿勢に欠けているから、どんな党でも単独では現状は打開できない。 

国民にも責任がある。

自分のエリアの利益だけを守ろうと権利ばかり主張し、国家全体のバランスを考えない。農・工・商の連繋はなくバラバラ状態になっている。 

マスコミに登場する外交や経済の専門家も、理想論に終始し実現不可能な論調が多いから、これも板キレ。機能していないのは残念だ。 

戦争に負けて、戦後日本は頑張ったが、一方で「自由、自由」と身勝手に振舞ってきた。その結果、「日本」という国家意識や一体感を完全に失ってしまった。 

大事な教育問題にしても、政府の方針はゆれ動き、親は家庭での「しつけ」をないがしろにして学校への注文ばかり。

教師は統率力をなくし、自信に満ちた指導ができなくなってしまった。 

まさに国難だ。戦争を放棄した以上、科学技術や伝統文化を基本とした文化国家を目指すほかはない。

その為にはタガが必要だ。 

タガとは何か。

タガとは、「国を思う真心と智慧の結集」だと私は思う。 

真実を見極め、勇気を持って力強く決断する「日本国のタガ」の出現を待っている。