若者に一年間の訓練を義務付けよ 森喜朗 元総理 

日本という国は、資源も武力も持っていない。自衛隊はいざと言う時に使える武力ではない。日本にあるのは人間力だけだ。

戦後日本の復興は日本人の類いまれな才能と英知、そして勤勉な性質があったからこそ達成された。だが今、日本からはその人間力さえも無くなろうとしている。 

今の日本は、未来に展望を持てない若者で溢れかえっている。昨今は「就活」とか「婚活」という言葉が流布しているが、それだけ就職や結婚という人生における大事に失敗する若者が多いということだろう。

そして一旦失敗してしまえば多くは再起の意欲を持つことも出来ずにその後の人生を過す。 

日本は大学全入時代に突入したと言われている。小さい頃から大きな挫折を経験せずに大学卒業まで辿り着くのだが、社会に出ると荒波に対処することができない。大学に入ることも、就職だけが目的化してしまい、失敗したときの対処法を知らない。 

また新たなチャレンジを試みようともしない。アメリカに行く留学生は、中国人が13万人、インド人が15万5千人、韓国人が7万人なのに対し、日本人は25千人しかいない。或は企業に入っても海外勤務を望まないサラリーマンが増えたと聞く。 

何か、日本の若者がロボットのような智恵も意欲もない人間になったかのような錯覚を覚えてしまう。がむしゃらに働いたり、知恵を絞って世界に伍する製品を作り上げていった日本人は何処に消えたのか。 

現在の教育機関が、目的や仕組みを変えない限り、この日本の現状を救うためには、社会に出る前の若者たちを人間教育するしかない。 

日本には、徴兵制がないが、例えば、大学卒業後の一年間、青年海外協力隊や自衛隊、或はNPOなどの社会奉仕活動を義務付けたらどうか。大学では学べない社会の仕組みや働くことの意義をその一年間で学ばせるのだ。 

これは何も法律を作る必要はない。いまの就活は大学三年から始まるというが、これなど百害あって一利なしだ。

企業の側から「一年間の奉仕活動をした学生しか採用しない」と宣言してみたらどうか。きっと今より優秀な人材が企業に集ると思う。 

日本の未来を背負う若者たちの「人づくり」こそ最も肝要である。