民主党政権はなぜ何も出来ないのか 

佐瀬昌盛 國際政治学者 

民主党という政党は、いわゆる冷戦期には無かった。(敗戦直後の時代は別)。今日の他の主要政党、つまり自民党、公明党、共産党は冷戦期に既に存在した。社民党でさえ、党名は違ったものの、日本社会党として冷戦期に存在した。

今日の民主党は、往時の公明党、共産党を除く冷戦期諸党の離脱組とポスト冷戦期に自己解党した民主党及びポスト冷戦期生まれの若干の群小政党とを一見、つきまぜる形で生まれ、成長してきた。

これらの諸要素はいずれね出自にまつわる夫々の遺伝子を今なお民主党内で保有している。

つまり、民主党という外皮の下、幾多の遺伝子はつきまぜられず、夫々勝手に動き回っている。前代未聞の政党だ。 

だから、民主党には党綱領がない。と言うより、作りようがない。民主党の領袖たちに「民主党とは何か。説明してくれ」と問うがよい。

答えが戻ってくろだろうか。「そんなこと聞かないでくれ」との悲鳴が聞こえそうな気がする。

つまり自己説明の出来ない政党なのだ。選挙では、各遺伝子が夫々の親和層に働きかけも二年前の秋には総和として衆院過半数は獲得できた。が、政権として何を実行するかとなると、内部の各遺伝子が相互牽制し合う結果、ぐるぐる回りすするばかり。前進がない。

消費税引き上げ問題しかり、TPP問題しかり、外交安保となると普天間移設問題、尖閣事件対応が示すように、そもそも政府与党としての定見が不明。何かが出来るわけがない。 

その事に気付いたのか、菅首相は「政権も取ったことだから」と、党綱領の制定が必要との意向を岡田幹事長に伝えた。が、これは順序がまるで逆である。

党綱領とは、党の自己説明なのだから、結党と前後して、政権獲得を目指して制定されてこそ意味がある。 

そのことが、民主党には分かっているか。それが理解できるならば、一つの方法がある。 

もう一度、野党に戻り、党綱領を制定した上で、つまり自己説明をつけたうえで、再チャレンジすることである。