328日 先んじて憂うのが政治家

 天下の憂に先んじて憂へ、天下の楽に後れて楽しむ。

      范文正  北宋の名大臣 

 これは有名な宋の名臣・范文正の「岳陽楼記」に出てくる言葉である。まことの政治家はまず国家のこと、国民の事を心配するはずである。事態が大きければ大きいほど憂もまた大きくならねばならぬ。明治の為政者はみな心配性であった。元老重臣がしばしば国事を憂えては互いに泣いたものである。今は、どんな重大危急な時局に臨んでも痩せるほど心配したり、互いに泣くような人物が殆ど居なくなった。余りに、のほほんである。「汝また百姓のために(こく)せんと欲するか」と、元の太宗は宰相・耶律楚材(やりつそざい)を且つ怒り且つ嘆じた。今、この宰相が欲しい。この宰相に初めて人民は救われるのである。   身心の学