平成303月「安岡正篤先生の言葉」 徳永圀典選

不善と肉体

 不善を積み重ねると内にこもって、心臓や肝臓などの内臓が円滑に働かなくなる。医者はその原因を知らないから色々薬をもって治療しようとするが、それはかなか難しい。そこで、よく自己を反省して、過を改め、人の踏むべき道を正し、すべてに感謝の気持ちを厚くすると、薬もいらず病気は治ってしまうものである。内臓の障害は大体感情に起因するものが多いのであります。また汗や呼吸なども心・情緒と密接な関係があり、肉体変化なしに感情というものはなく、感情を抜きにして肉体変化はありません。 先哲講座

 

 身計とは、私たちがいかにして身を立て、身を持するかという心構え、世に立つ志を計る、考えを定めるということであります。詳しく尋ねると、限りない問題ですが、要約して言いますと、一番大切なことは「師」と「友」である。「師恩友益」、師友によらなければ、いかに天稟(てんぴん)に恵まれておっても独力ではいかん。むしろ天稟に恵まれておっても独力ではいかん。むしろ天稟に恵まれておればおるほど師恩友益を必要とするのであります。

 吉田松陰が有名な士規七則の中でも、「成徳達材には、師恩友益多きに居る。故に君子は交遊を慎む」と掲げている。大義が良ければ良いほど友益が要るので、徳を成し、材は要するに才であるから、人間の要素で言いますと、最初に言った知能とか技能とかいうものにあたる。一方は人間の本質的要素であるところの徳性、つまり人間の本質と目的、両方の要素がこの言葉の中にちゃんと含まれておる。人間を完成させるのには「成徳達材」である。そして徳を成し材を達するのには、「師恩友益多きに居る」と言うのであります。出来が良ければ良いで、悪ければ悪いで、むしろ良いほど師友というものが大切な要素なのであります。       人生の五計