自己抑制と日本武士道 

トインビーは次のように言う 

「武士は、殆ど崇高と云ってよいような高い自己抑制の境地に到達した。

即ち、幕末、もはやその外に超然としていられなくなった西洋化された世界の環境の中で、日本が独立を維持して行く為には、自分(武士)が犠牲を払わなければならないと確信し、自ら進んでその特権(武士)を放棄したのである。」 

世界を見渡しても、通常、特権階級にある人間は、それを手放したくないため恋々とし、その後、下からの突き上げで革命が起こり処刑されてしまうのであるが、日本の武士は日本自体を憂いて、自らの特権を犠牲にし明治維新をやり遂げたのである。 

これは、義・誠・名誉を重んじ、損得勘定をとらない武士階級最大の、そして実在の武士としては最後の面目躍如たる所である。 

平成20年3月6日 

徳永日本学研究所 代表 徳永圀典