勤勉革命

明治維新後、政府は二宮尊徳の銅像を全国に建てて「勤勉性」の大切さを教え込みました。だが、戦後、全国の小学校にあった尊徳の銅像は捨てられましたが、高度成長期の頃まで勤勉性の大切さの記憶は続いたと思われる。敗戦後の繁栄もそれに起因しております。

近年は、長時間労働が問題になっているが勤勉とは、長時間労働のことでは無い。要するに、だらだらと時間を過ごさず、高い集中力と目的意識を以て仕事をきっちりやり遂げることなのであります。仕事をする上でバランスをとることは非常に重要であります。

勤勉革命と云う言葉があります。世界の歴史学会では定着していると云われる。慶応大学名誉教授の速水融氏が発表した概念である。

江戸時代まで、日本は元々勤勉とは言えなかったと云われる。将来もどうなるか分からない。

では、なぜ日本人が勤勉になったか、江戸時代からであります。

江戸時代は矢張り近代日本を創り上げているのです。

江戸時代は、「人間がより働く」ことで経済発展を遂げたわけであります。これが勤勉革命と速水教授の云われる概念で世界歴史学会では定着しているらしい。勤勉革命、industrious revolutionである。

速水先生の研究は、18世紀の濃尾地方のある村のこと、ある時期には人口は30パーセント増えたのに、労働力であった牛馬の数が半分以下に減っていた。その理由を探求していると、農家の労働生産性が向上した為、人間が牛馬の仕事をやれるようになり牛馬の数が減ったという事実が解明されたのであります。

苦役とは、他人に強いられることで江戸時代では、下人とか下女が担っていた。人間が牛馬に代わって苦役をしたということではない。

農家は「働けば働くほど自分たちが豊かになる」と云うことが分かったのです。それで「家族総出」で一生懸命に働いた。下男とか下女にはそういう「強い動機」が無いから手抜きするのですね。

このように「働く動機」を農家の家族は持ったから勤勉になったのであります。

現代の我々も「動機」を持てば、どんな大変なことでも真剣に取り組みますね。現代では、インセンティブとか外来語のように云うが、日本人は江戸時代からやっていたことなのです。

これが「勤勉革命」の本質であります。いつの時代にも忘れてはならぬ金言であります。

現代の女性と比較すると、昔の女性は、家族のそばで働き、自分の労働が、家族の利益になることを体感していました。

ここが大切なのですが、現代は、そういう仕組みがなくなっています。

ここに「動機付け」の必要性が発見できます。企業内でも部下に動機付けの得手不得手で成果が違うことを体験しました。だか、日本人は江戸時代からしてきたこと、自分を知らないのは人権と同様です。

勤勉性、人間にはいかなる時代でも、「失ってはならない不可欠の資質」でありましょう。

二宮尊徳を学ぶにあたり発表致します。

 

           平成2936

鳥取木鶏会 会長 徳永圀典