安岡正篤の言葉 平成293月度 徳永選

霑恋(てんれん)するなかれ

 その中でも誰でも心すべきことは「起 黎明(れいめい)即起(そっき)し、醒後(せいご)霑恋(てんれん)する(なか)れ」であります。夜が明けたならすぐ起きる。しかもフラーッと起きるのじゃない。即起である。そして目を覚ましてから後は霑恋(てんれん)するなかれ、「霑」と言うのは「うるおう」と言う字、ぐずぐ゛ずする、ひたるという意味。霑恋(てんれん)するなかれ。ああ眠いなとか、いい気持ちだな、もう少し寝床の中でうとうとしていたいなんて言って、ぐずらぐずらかるのを霑恋(てんれん)という。目を覚ましてからはぐずぐずすると、これは誠にいい格言です。

 

学問しつめた人

 英傑は非凡の気迫力量才幹を以て功業を争うものであるが、多く気に任せて、深く心を練るということがない。君子は功名富貴を念とせず、学問情熱を旨とする。

 その学問とは何であるか、窮して困しまず憂えて意衰えず、禍福終始を知って惑わぬ心術を養うを本義とする。英雄は自ら君子たるか、必ず君子を師とするか、いずれかでなければならぬ。君子はまた大いに器量を養って、内に練熟する所おのずから外に発し、英雄を服するだけの品威を具えねばならぬ。  百朝集

 

 英傑大事に当たっては固より禍福生死を忘る。而て事適々成れば則ち亦或は禍福生死に惑ふ。学問情熱の君子に至っては則ち一なり。 大塩中斎 洗心洞箚記 

子供

 幼児は自然に伸ばしてゆけば、三才で成人の機能の80%啓発されるという。だから教育の宜しきを得れば、人間17?18歳にして堂々たる成人になる。それが世の愚かなる親や教師の為に目茶目茶にされて、17-18歳には満身(まんしん)創痍(そうい)となって、世の中に送り出されるのであります。子供こそは(まん)億劫(おくごう)の生命・精神の権化(ごんげ)である。その子供に対して、親は本当に()を合わさなければならない。さすれば、子もまた親に掌を合わすでありましょう。汝に依って我を礼し、我によって汝を礼する。そうしてこそ人間の道徳・文化というものが進んでゆくのであります。 論語・老子・禅