「人間の八相」 南北相法 人相見の秘訣

一、悪相は相対して何となく相者の意に鋭くうかむなり。又何とぞせばあらけなく打がごとく相者の意うかむ。(しかれ)ども、相者の意に見おろすが如くにおもえり。此人かならず悪相なり。

二、貴人の相は相対して相者の意にとうとき神仏の社堂に入るがごとく思えり。此人かならず貴相なり。

三、威相(いそう)は相対して平人が時の太守(たいしゅ)または奉行の前に出たるがこどく、ただなにとなくおそるるの意、自らうかべり。此人必ず威相なり。

四、貧相は相対してなんとなく、物さみしくて、意陰にとじて、おくれひらく花の葉陰に(しぼ)めるがごとし、此人必ず貧相なり。

五、福相は相対して其かたち暖かなる如く、時正のころに山野を楽しむるが如く、また自然と労なきが如く、又相者の意自ずから豊かなり。此人必ず福相なり。考うべし。

六、短命の相は何となく其形は菜のしおれたるが如く、又勢い有れども、燈の油なくして火の消ゆるが如し。此人必ず短命なり。

七、孤独の相は、相対して其形さみしくて鶏の雨に逢えるが如し。又相者の意自ずから便なく、老いたる後を思いやるの意あり。此人必ず孤独の相なり。

八、寿相は相対して相者の意、豊かにして安心し、又其体健やかにして物事におくせざるが如くに思えり。例えば小船に居り大船の渡るを見るが如し。此人必ず寿相なり。

九、八相の事は、各相者の見識によって考うべし。尚お八相は真の八相少なし。八相共に相交わる事あり、其意を以て考うべし。又相者の徳不徳に依り貴人たりとも賎人と相し、賎人たりとも貴人と相する故に相者は己を相して後、人を相すること肝要なり。考うべし。