再び、「安岡正篤先生の言葉」岫雲斎選 平成311月例会

 

人間尊重は礼から

 現代の人間は立って礼をすることさえ既に異様に感じる。それほどだらけているというのか、横着というのか、或いはそういうことに対して無自覚、不感症になっている。人間はなぜ礼をするのか。自分というものを通じて相手を、人を礼する。お互いに相礼する、人間たる敬意を表し合うのである。

本当の人間尊重は礼をすることだ。お互いに礼をする、全てはそこから始まるのでなければならない。お互いに()れ、お互いに(あなど)り、お互いに軽んじて、何が人間尊重であるか。  東洋人物学

 

低俗化した日本人

 国会の質問を見ていても、一国の大臣、特に総理に対する、礼節を弁えない態度と質問には驚くことがあります。その点は、明治・大正初期の議会人と、現在の議会人、政党人とは人種が違うのかと思うほど変わっております。これは学校教育の弊害であります。教育が普及しながら本当の学問を教えないものですから、人間そのものが駄目になったように見えるのであります。総じて申し上げますと、現在日本人は、教養を失って低俗化しつつある、あらゆる社会にエリートがなくなって下品になりつつあるということで、これは大変情けないことであります。 活眼活学

 

読書に就いて

 読書するのに極めてざっぱくである。あれこれと読み漁る。これは大きな病根であるから立派な書物を選び、これを読んで十分だというところまで考えて本当に自分の心で掴むことを目的とする。また貪り読んではいけない。読まなくてもよいものを無暗に読む傾向が昨今増えました。よく新幹線などに乗りますと、小説・週刊誌の類を何冊も買って、あっちを見たりこっちを見たりしておる人がありますが、これは貧看しておるのであります。やはり私たちは優れた本を深沈緻密に読まなければなりません。  先哲講座