このままでは国は滅ぶ 武村正義 元官房長官
この国の破局が刻々と迫ってきている。
「なぜ?」と聞かれれば、「この国の財政はもう破綻してしまっているからです」と答える。
もはや、議論の段階ではない。
覚悟の時なのだ。
「どうして?」と言う人があれば、
「それはあなたが選んだ政治の結果です」と答える。
この国の長期債務の総額は892兆円である。二年続けて予算に占める借金は税収を越えている。
世界史上例がない超借金大国に私たちは身を置いているのだ。
この異常な状況を多くの人々は気がついている。それでいて、誰も動こうとはしない。国民も経済界もマスコミも政治家も。
そして我らがこの国の宰相さえも。
せめて年頭の「施政方針演説」はと期待していたが、財政再建への具体的取り組みは全くふれられなかったし、わざわざ飛行機で出かけたダボスの特別講演でも、この事については一言も発言されていないのだ。
今の日本で、何より優先されるべき政策は「税と社会保障の一体改革」だろうか。
それ以上に、この国の財政を健全化させ「歳入歳出の一体改革」を決断することではないか。
財政の持続可能性をしっかり確保し、負担における世代間の不公平を取り除かないてで、どうして若者が未来に希望をつなぐことができようか。
財政赤字は無責任であると同時に子供や孫の世代に対して恐ろしく不道徳なのだ。
イギリスは、かってサッチャー政権の時に、財政再建に取り組んだ。今またキャメロン政権は、不況のど真ん中で、荒々しいとさえ言える歳出のカットと増税を進めている。
この国の破局を救う最後の機会は、次の総選挙であろう。
深刻な財政危機にどう対処するか。相変わらず耳障りのよい「巧言令色」でその日暮らしの政治を選ぶか、国民に負担と忍耐を訴える、正直で武骨な政治を撰ぶか。
国民は甘口に靡くか、辛口を支持するかの大きな岐路に立たされることになろう。