人間観察法

これは安岡先生の独断場であろう。呻吟語を引用しつつ先生は語られた。人間観察法、それが「(ろっ)(けん)」と「(はっ)(かん)」である。

 

(ろっ)(けん)

験は試すことだ。人間を験すのである。如何なる方法で人物を験すのか。

1.(これ)を喜ばしめて以てその(しゅ)(ため)す」

之とはその人物、何を験すのか、先ず喜ばせてその守、即ち節操が守れるかのテストである。人間、いい調子になり喜ぶと、ついつい原則とかルール、或いは掟をまあいいかと破る性癖がある。そこを観ているのだ。酒、女、お金に、だらしないか見抜かれる。しっかりしている人物は、少々の誘惑には墜ちないものだ、それは守が堅固なのだ。眼識高い人は観ている。

 

2.「之を楽しませて以てその(へき)を観る」

こうなると怖いような気がする。楽しませてその人物の偏りの面を験すのだ。楽しい感情に溺れさせてその人物の弱点を見抜くのだ。

 

3.「之を怒らしめて以てその節を験す」

 わざと怒らせて、節度があるかを観察する、験すのだ。怒りと言う感情を爆発させることは理性の節度が無いことである。本物かどうか験すのである。

 

4.「之を(おそ)れしめて以てその特()を験す」

 恐れさせるような事をしてみて依存性、独立性、自主性の有無を験す。独とは独立性、自主性。

 

5.「之を(かな)しましめて以てその人を験す」

 悲しませることでその人柄を験す。悲しい時は全人格が現れる。

 

6.「之を苦しましめて以てその志を験す」

 困難に直面させて、その志が本物かどうか確認する。艱難に耐えて理想―志を実現するのに動揺がなければその人物は本物である。