国を憂う“石原流”

「日本のために東京が貧乏になったっていいじゃないか」

                                       産経2011.4.10  

 東京都民は4度、石原慎太郎氏(78)を「首都の顔」に選んだ。10日に投開票された東京都知事選は、東日本大震災を受けて首都の防災と被災地支援を争点に11人が争ったが、現職の石原氏が圧勝した。選挙期間中も被災地の視察など公務を優先した。圧勝にも万歳はなかった。当選確実を受けた会見で震災対応が後手後手に回る民主党政権を痛烈に批判し、“石原節”を披露した。

 大勢の支持者であふれた港区南青山の事務所。午後8時45分、石原氏は大きな拍手と無数のフラッシュで迎えられ、「(震災は)国難。これを契機に立ち上がらないといけない。微力ですが私もがんばる。日本人同士肩をくんでがんばろう」と、4期目に向けた意気込みを語った。

 石原氏は防災服姿。「4選しても同じことをやるしかない。それにプラス震災対策。東京は力もあるし、日本の原動力。東京が混乱して止まったら日本が止まる」と復興支援に全力をあげることを宣言した。

 石原氏は「とにかく150%辞めるつもりだった」と出馬前の心境を吐露した上で、「日本はこれから大変。我欲を抑えて生活をつましくする決心をしないと日本はもたない。抑制しないとこの国は再生しない」と訴えた。

また、被災地の宮城県気仙沼市を視察した際に、壊滅した漁港の中で懸命に復旧作業に取り組む地元の漁業組合などに国からの支援の手が回っていなかった事例をあげ、「国の役人は何も気づいていないし、統御する政府もだめだ。東京は東京でやる。力はあるから東京のためだけでなく、日本のために東京が貧乏になったっていいじゃないか」と“覚悟”を述べると大きな拍手が起きた。

 選挙事務所には、長男で自民党幹事長の石原伸晃氏や立ち上がれ日本の平沼赳夫代表など多くの国会議員や都議らが詰めかけた。

 3月11日に都議会で4選の出馬宣言をした直後の東日本大震災。被災地支援などで陣頭指揮を執った石原氏は、選挙期間中も防災服姿で公務に専念し、「東京がガタガタになったら日本が終わる」と水道水から放射性物質が検出された都浄水場や、被災地の福島、宮城県を視察するなど国を憂う「石原流」を貫いた。

 「地獄だよこれは」。石原氏は被災地をこう表現し、数珠を握りしめた。防災、復興支援というさらなる課題が待ち受ける。