野々宮(ののみや) 

 野の宮の(つた)吹く宵や秋の声  巌谷(いわや)小波(さざなみ) 

嵯峨野の中の嵯峨野のような思いがある野々宮。

天竜寺の前を清涼寺の方に向かって行くと左手に折れる(みち)がある。
「左、ののみや、落柿舎」と刻んだ石があった。
 

暗い藪道で、鬱蒼として、両面から覆いかぶさるような竹林に圧倒される。 

謡曲にある、

・われ此の森に来て見れば、黒木の鳥居小柴垣、昔にかわらぬ有様なり。
・・・伊勢の神垣隔てなく、法の教の道直に、ここに尋ねて宮所、心も澄める夕べかな。

 

ここは伊勢神宮に奉仕する内親王が、生涯の無垢を約束して華やかな宮中を出て
ここに入り修行されると聞いた。神に仕える斎宮の清浄無垢な感じのする地である。

               岫雲斎圀典