万葉集 春の歌  平成244月例会    徳永圀典選

 

象山(きさやま)()    巻六-924  山部赤人

 

 み吉野の 象山(きさやま)()の ()(ぬれ)には

       ここだも騒ぐ 鳥の声かも

 

 聖武天皇が吉野離宮、山部赤人は宮廷歌人、春賛歌の歌で著名、宮滝、

 ここだも?甚だしい、木々の梢、律動的、これは反歌で長歌もある。

 

長歌 923  山部赤人

  やすみしし わご大君(おおきみ)の 高しらす 芳野の宮は たたなづく

  青垣(ごも)り (かわ)(なみ)の 清き河内(かふち)ぞ 春べは 花咲きををり

  秋されば 霧立ち渡る その山の いや益益に この河の

  絶ゆること無く ももしきの 大宮人は 常に通はむ

 

さわらび 巻8-1418 志貴皇子

 石激(いはばし)る 垂水の上の さ(わらび)

    ()()づる春に なりにけるかも

 志貴皇子は天智天皇の皇子。(よろこ)びの歌。晴れ晴れとした、伸び伸びとした歌。悠々せまざる。生き生きとしたリズムがある、「の、の、の」と。皇子は天皇になれなかったが皇子が光仁天皇。

 

かたかごの歌 巻19-4143 大伴家持

もののふの 八十(やそ)をとめらが くみ(まが)

    寺井の上の (かた)香子(かご)の花

 かたかご、カタクリのこと。二つの葉をだす。もののふ、大勢の、八十の枕詞。沢山の乙女、国分寺の寺井の井戸を嬉々として水を汲みに来ている。初々しさ、の、の、の、リズムと春と乙女の華やぎ。越中の国司の時。