安岡正篤の言葉 4月例会     徳永圀典選

 

国の四患 

 

人間あるいは歴史の興亡の理に明るい人が指摘している言葉の中に、「国の四患」(荀悦申鑑)というものがある。

それは、国が広いとか狭いとか、人口が多いとか少ないとかも物産がどうだ貿易がどうだ、ということではなくて、その国の生活、即ち国政というものが、どれだけ真実であるか。反対を言えば、うそ()ではないか。うそ()が横行していないか、或いはどれだけ公に行なわれているかどうか。国民生活、政治というものが、どれだけ公正に行なわれているか、あるいは私利私欲になっているか。

 この人間世界というものは、自然と同じように法の支配である。rule of law である。従って、これにもとづいて、 rule by law、

法律の支配がある。その法制、法律、法令というものが、どれだけ正しく行なわれているか。或いはそうでなくて、わがまま、無法、無軌道という意味の「放」になっているか。法が無くなって「放」になっていないか。

 人間というものは、素朴・剛健でなければ、生命は育たない。人間に一番いけないのは、奢りというものである。これは引き締めなければならない。これを節・倹という。

それを考えた方が外的条件をずらりと並べて、資源がどうだ、貿易がどうだ、外資がどうだこうだと議論しているよりも、ずっと早くその国家、その国政、現在における国民生活の状態がはっきりわかる。真―偽、公―私、法―放、倹―奢。その偽、私、放、奢は一つだけでも国家の病気である。四つ揃えば、四患と言って、国亡びざるはないと言われている。

                人間の生き方