420日 貧乏 その三

 三里や四里の道を通学するということは大正時代までは平気でありました。田舎では当たり前でした。ちょっとも珍しいことではなかったのです。前大戦後から、だんだん交通・通信が発達して、自動車だの電車だの、バスだのが到る処にできて、総じて人間が歩かなくなりました。人間が歩かなくなるということは、たいへん反省せねばならぬことです。人間が歩かなくなると共に堕落したということもできます。明治・大正さえそうだから、まして旧幕時代においてやです。