421日 貧乏 その四

「十六才の一少年は日々経を抱きて往復するに、常に(はだ)()なりき、師・絅斉(けいさい)見て之を憐れみ家人に命じて草履を与えしむ。少年謝して之を受け穿()いて出づと雖も、門を出づるや直ちに脱ぎ、砂を払い、之を(ふところ)にして帰る。翌日来るや跣足平日の如し。而して師の門に至るや、()た草履を懐より取り出し穿きて入る。その用意()の如きものありき」