422日 貧乏 その五

 とても今日の諸君の想像もつかぬことだろう。私は、ありありとその少年の姿が目に浮かぶ。そして目頭が熱くなるのです。西郷隆盛なども貧乏侍の倅で、始終、破れ草履を履き、粗服を纏うてておった少年です。それでも行儀は非常に良かった。貧乏の例は際限なくある。むしろ人によると「人間は偉くなるためには貧乏でなけりゃならぬ」とまで言います。過言ではありません。貧乏艱難、あるいは貧弱・多病、その中にいて偉くなったというのではなく、その中におったればこそ偉くなったと言い得る人がどれほどあるか分からない。           運命を開く