4月25日 貧と感激 その三

 その頃の海舟は、日記に書いておるが、母は老いて病床にあるし、妹はいるけど幼くて家事にもあたれない。飯を炊くにも薪がない。仕方ないから縁側の板を剥いでそれで飯を炊いた。夏に蚊帳もなければ、冬に炭もない。「貧またここに到って感激を生ず」と書いてある。この言葉を忘れられない。貧乏してベソをかくというのじゃ、もう駄目ですね。「貧またここに到って感激を生ず」、人間はこうなくちゃいかん。

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