官僚を下放せよ 川勝平太 静岡県知事 

五里霧中に見えるのは、日本が明治以来の中央集権体制を改めて、国の形を変える過渡期にあるからです。 

そこから抜け出るには、外交と内政の一体的改革が必要です。民主党政権はその戦略を欠いているので、次の政策を勧めます。 

防衛・外交安全保障面では、普天間、尖閣諸島、北方領土で次々と躓き、対米・対中。対ロと全方位で国益を損いました。 

前原外相は、日米を基軸に据えた従来路線に資源通商

外交を加えて巻き返しており、高く評価します。

ただ、通商と外交の一体化は、諸外国(オーストラリアや韓国等)が既に採用しており、日本は出遅れているので、外務省に経済産業省の通商部局を合体させて、資源通商外交を一段と強化すべきです。

これに加えて、中小国との国際的連携を勧めます。東西軸は「シルクロード外交」即ち中央アジア諸国との友好善隣関係の構築が、また南北軸は、時差のない経度連合(西太平洋津々浦々連合)が戦略です。

シルクロード諸国も西太平洋諸国も親日的です。シルクロードには希少資源が、西太平洋には海洋資源があり、東西軸・南北軸の中小の多数の国との連携強化で大国を牽制できます。

地域主権を推進する内政では、「国の出先機関の原則廃止」の中身を、民主党も全国知事会も、履き違えています。 

そもそも、府県は、国の下請け機関として創設されました。府県は、国の出先機関の最たるものです。

それ故、「都道府県(=国の出先機関)の原則廃止」を打ち出すべきです。

併せて内政に関わる諸省(国交・農水・厚労・文科・経産・環境・総務・財務等)の官僚を東京から「いわゆる国の出先機関」に「下放」すべきです。

中央政府の内政諸省を国の出先機関に降ろして強化すれば地域力は高まります。

「国と戦う」ことを標榜する一部知事諸氏に言いたい放題を許すのが地域主権への道ではありません。

知事諸氏が例えば関西で府県に広域連合を打ち出すにしても、府県の職員に広域行政を荷なう能力はありません。知事が変われば勢いは一気にそがれます。 

府県を超える広域行政を行ってきたのは国の出先機関です。内政に関わる中央官僚を出先機関に全面的に降ろして霞ヶ関を解体しながら官僚を大々的に活用することこそ、地域主権に向けた政治主導です。