したたかなリアリスト明治人に学べ

哲学を持っていた久米邦武 

遣欧使節団のまとめには、黒か白かではない、それを越えた哲学を持っていたのだと分かる。 

それは教養・素養に深さであり鎖国時代の武士で、この視野の高さと驚くと共に改めて敬意を表する。

それは、現実世界は、黒か白かでは断定できぬ、当然矛盾がある。 

その矛盾の中に真実があるのだ。リーダーのバックボーンである禅的発想ではごく当たり前で、そうした教養が久米等の背骨を組成していたのである。

 

トータルで物を見れば、右も左も、上も下も、東も西も一つのものである。それらを包括した思想「中庸の思想」こそ久米等の心底に潜在していたから分明できたのであろう。 

久米邦武は「実記」ロシア編でこう記録している。「世界の真形(まことかたち)(りょう)()し、(てき)(じつ)深察(しんさつ)すべし」と。 

現代の政治指導者に教えてやりたい言葉である。世界の真の姿をはっきりと認識し、的確に深く洞察すべし、ということである。いつの時代でも通用する核心をついた表現である。本当の姿、実際の状況を実地に見聞することの尊さを指摘したものである。 

平成20425

徳永日本学研究所 代表 徳永圀典