44日 ほんもの その二

そこで始めのうちは新鮮な気分でやりだしますけれども、しばらくすると慣れっこになって、だんだん新鮮な心掛け意図というようなことが麻痺してしまって形の如く機械的になってしまう。味もそっけもなくなる、いわゆる因循姑息、無感激になって生命を失ってしまう。終始一貫始めの如き気合・感激・精神をもって続行することは難しいことであります。生命を失わず、初心、素心というものを持ち続けてゆくという、そういう意味で久しくするということは、これは非常に尊いことであります。それで初めて本当の人間、本当の事業、本当の研究が出来上がるのであります。

                安岡正篤講演集