嵐山 その三
嵐峡(らんきょう)抒情(じょじょう) 臼井喜之介
川のながれのゆるきごと
時のながれもながかりき
されど時空(じくう)をつらぬきて
なお消えやらぬ影やなに
川のほとりにたたずみて
うつつともなく聞き入るは
山の嶺(ね)をふくかざおとか
いにし世遠きひめごとか
もみづる秋に逢いあうて
かえらぬ影をしぬびつつ
無韻(むいん)のうたを書きつづく
川のながれのとおさかな