徳永の「古事記」その2 「神話を教えない民族は必ず滅んでいる」
これは、世界的歴史学者トインビーの言葉である。「12歳から13歳くらい迄に、民族の神話を学ばなかった民族は、例外なく亡んでいる」。日本人にとって、戦慄するような叡知の言葉である。日本人はアメリカの遅効麻薬のような占領政策の効き目を痛い程感じなくてはならぬ。
平成24年5月
1日 | 日本の神様を知る |
古事記も日本書紀も、日本を生み、作り、統治してきた神々の物語である。 | どのような意図で編纂されたのか。概略を図説してみよう。 |
||||||||||||||||||||||||
2日 | 編纂意図 |
|
|
||||||||||||||||||||||||
3日 | 記紀に見る日本の神々 |
古事記と日本書紀は天地創造の物語から始まる。両書を併せて「記紀」と呼ぶ。両書には、縄文時代の「精霊崇拝」、弥生時代の「祖霊信仰」、大和朝廷の「首長霊信仰」などなど古代日本の「信仰対象」が見られる。 |
その後は、神話に裏打ちされた正統な支配者が国を治めて行く歴史的な物語へと移行する。神武天皇が天下を治めるまでの「神武東征」物語には、色々な神が進路を支援し、時には悪しき神が邪魔をする。場合には神武に降伏する神も登場して神話の雰囲気が濃厚である。古事記の三分の一は神話である。 |
||||||||||||||||||||||||
神々 (国の誕生から大和朝廷まで) |
神々 (国の誕生から大和朝廷まで) |
||||||||||||||||||||||||||
4日 | 二種類の神々 |
一つは「天つ神」で天地創造後に天(高天原)に現れた神様。 今一つは「国つ神」で地上に現れた神様。
|
然し、天から追放され地上に住むこととなる「須佐之男命」の子孫は「国つ神」に含まれる。記紀は何れも、天つ神により国が生み出され、平定されて天皇家が誕生する。天皇家が代々重ねられていく様子が綴られている。天皇の祖先である天照大神を含む天つ神が、国つ神を従えて行くのが記紀の基本的な展開である。 |
||||||||||||||||||||||||
神々の誕生 |
神々の誕生 |
神々の誕生 | |||||||||||||||||||||||||
5日 | 神々の誕生 |
|
|
||||||||||||||||||||||||
6日 |
古事記で最初の五つの神々「別天つ神」 |
それを「別天つ神」と申す。この世が、天と地に分かれ天に「高天原」が出来た時、最初に出現したのが「天之御中主神」、「高御産巣日神」、「神産巣日神」の「造化三神」である。高い生々霊力を持つ神々。 |
宇摩志阿欺詞備比古遅神、次に、
天之常立神が誕生した。これら五神は高天原の中でも特別の存在の神であり「別天つ神」と呼ばれる。 |
||||||||||||||||||||||||
7日 | 「別天つ神」の図説。 |
|
|
||||||||||||||||||||||||
8日 | 「神世七代」の神々 |
次に誕生するのが「神世七代」の神々である。「国之常立神」「豊雲野野神」 |
さらに男女ペアの神五組の中で最後に登場するのが「伊耶那岐神」と「伊耶那美神」である。他の神々から命じられて、「この漂える国を良く整えて、作り固める」事となるのである。 |
||||||||||||||||||||||||
9日 |
|
|
|
||||||||||||||||||||||||
古事記の神々の世界とは |
古事記の神々の世界とは |
||||||||||||||||||||||||||
10日 | 神話の舞台、天と地の仕組み |
記紀神話には陰陽五行説に基づく天と地の世界観があると言われる。天にある神々の住む世界が「高天原」である。そして、天と地の間にかかるのが「天の浮橋」、地上の世 |
界との中間には理想郷として海神の宮など |
||||||||||||||||||||||||
11日 |
海には海神の住む海中に「綿津見宮」があるとした。 |
註 「千引の岩」 |
|||||||||||||||||||||||||
12日 | 葦原の中国は、国の中の国であり、択ばれた人間の住む中原の国で尊称である。出雲の国も中国である。 |
根の堅州国は死者の住む黄泉国ではない。天、地上、地中の縦軸の三世界である。葦原の中国は横軸で繋がっている。海の向こうの理想郷の「常世の国」や「海神の国」もある。海神の国は、現実には海外の新知識や新技術であろうか。 |
|||||||||||||||||||||||||
13日 | 大地と神々を生んだ神 |
それは「伊耶那岐神」と「伊耶那美神」の夫婦神である。国生みをしたこの両神、神生みで命を落とした妻・伊耶那美神を追い、 |
伊耶那岐神は黄泉国へ行く。その後の「禊」で伊耶那岐神が顔を洗った時、太陽神、月神、須佐之男命が生まれている。 |
||||||||||||||||||||||||
14日 | 神話の最初の主人公 |
それは、「伊耶那岐神」と「伊耶那美神」であることは言うを待たない。神世七代の最後に生まれたペア神。男女の形の最初の神である。 |
神世七代は、最初の男女神は「ヒヂ」=泥、 二番目の神は、「クイ」=身体の原形、 三番目の神は、「ト」=陰部」、 四番目の神は、「オモダル」=面足、顔や身体の充足、 これらを神格化したもので、神世七代とは、「次第に両性のそれぞれの器官が揃って行く」過程を表現しているのであろう。 |
||||||||||||||||||||||||
15日 | そして、最後に誕生し、五体具足の形をなした最初の男女神が伊耶那岐神と伊耶那美神である。 |
名前の「伊耶」は誘うの意。「那」は助詞の「の」、「岐」は男、「美」は女を表している。この二神の役割は、男女の営みによる繁殖である。 |
|||||||||||||||||||||||||
16日 | 他の神々から、「この漂える国をよく整えて作り固めよ」と命じられた二神は、天に浮ぶ天の浮橋に立ち、下界を雲の間から見下ろした。そこに脂のような薄い膜が漂い、枯れた葦や草が頼りない浮島を作っているようにも見えた。二神は、聖なる「天の沼矛」を伸ばして、その海を掻き混ぜた。 |
そして海から天の沼矛を引き上げた時、こぼれた塩の滴が淤能碁呂島となる。二神は、この島に降り、「天の御柱」と神殿を建てて、他の島を生む準備に入るのである。 |
|||||||||||||||||||||||||
17日 | 二神の言葉 |
伊耶那美神 「吾が身は成り成りて成り合わぬ処一処在り」 |
伊耶那岐神 「吾が身は成り成りて成り余れる処一処在り」 |
||||||||||||||||||||||||
18日 | 淤能碁呂島に降りた伊耶那岐神と伊耶那美神が交した言葉である。 |
二神は「成り合わぬ」不完全な部分を「成り余れる」余分な部分で埋め、国生みすることを承諾し合う。この後、天の御柱の周囲を回り落ち合った場所でまぐあい(性交)をする。 |
|||||||||||||||||||||||||
19日 | 淤能碁呂島に構えた神殿で、二神は会話を交わす。 |
それに対して、イザナギは「吾が身は成り成りて成り余れる一処あり」と言い、「その余分な処で貴方の不完全な処をふさぎ国土を生み出そう」と話した。イザナミは「宜しうございます」と了承した。 |
|||||||||||||||||||||||||
20日 | 最初の出産の失敗原因 |
二神は、イザナギの提案で天の御柱の周囲を逆に回り出会った所で契りを交すことを決めた。イザナギは左から、イザナミは右から回り、出会った。先にイザナミが口を開き |
「あなにやし、えおとこを」(ああ、なんて、いい男なのだろう)続いてイザナギが「あなにやし、えをとめを」(ああ、なんて、いい乙女なんだろう)と交して契りを交す。 |
||||||||||||||||||||||||
21日 | 最初に生まれた子(島)はヒルのような骨無しの「水蛭子」であった。不完全な子であり葦舟に乗せて流してしまう。続けて生んだ子(淡島)も同様であった。 |
なぜ出産がうまくゆかないのかと高天原の神々に相談した処、神々は鹿の肩甲骨を焼きそのひびの入り方で占う。「御柱を回る儀式の際に、最初に女神のイザナミが口を開いたのが良くない」とした。 |
|||||||||||||||||||||||||
22日 | イザナギ、イザナミは改めて天の御柱の周囲を周り、最初にイザナギが口を開き、次いでイザナミが答えて契りを交した。そして、生まれた子が八つの島、大八島国である。そして次々と国生みをする。 |
吉備小島、小豆島、大島、女島、知詞島、そして両児島であり国生みは終了した。 |
|||||||||||||||||||||||||
23日 | 註 大八島国 |
1.淡路之穂之狭別島(淡路島) 2.伊予之二名島(四国) 3.隠伎之三子島(隠岐島) 4.筑紫島(九州) |
5.伊伎島(壱岐) |
||||||||||||||||||||||||
24日 | 註 |
天安河原 |
絵島 淤能碁呂島の候補地「絵島」、淡路島の北に存在。 淤能碁呂島の候補地。淡路島の南方。 |
||||||||||||||||||||||||
途方もない名前の神々 |
途方もない名前の神々 |
||||||||||||||||||||||||||
25日 | 国生みを終えた後は次々と神を生む。 |
大事忍男神、石土毘古神――石や土の神格化 石巣比売神―石や砂の神格化 大戸日別神、天之吹男神――屋根葺きの神格化、 |
大屋毘古神――家屋の神格化、 風木津別之忍男神、大綿津見神――海の神 速秋津日子神、速秋津比売神――水戸に関わる神 |
||||||||||||||||||||||||
26日 |
さらに、速秋津日子神と速秋津比売神により河口分担の為に生まれたのが沫那芸神、沫那美神、頬那芸神、頬那美神、天之水分神、国之水分神、天之久比奢母智神、国之久比奢母智神など水に関わる神であり、私はこれを書きながら、その途方もない命名に驚嘆する。次に生まれた支那都比古神は風の神。木の神様の名前は、久久能智神。 |
山の神は、大山津見神。野の神様の名前は、鹿屋野比売神、別名まであり野樵神と言う。 大山津見神と野樵神が生んだのが天之狭土神と国之狭土神、次に天之狭霧神と国之狭霧神、天之闇戸神と国之闇戸神、大戸惑子神と大戸惑女神である。 |
|||||||||||||||||||||||||
27日 | 次に生んだのは、鳥之石楠船神(別の名は天鳥船)、大宜都比売神、火之夜芸速男神(別の名は、 |
火之R毘古神、火之迦具土神)。この子を生んだことで、イザナミは女陰を焼かれて病み臥せることとなる。 |
|||||||||||||||||||||||||
28日 | その病床での吐瀉物から生まれたのは、金山毘古神、金山毘売神、糞から生まれたのが、波邇夜須毘古神、波邇夜須毘売神。 | 次に尿から生まれたのが弥都波能売神、和久産巣日神。この神の子は豊宇氣毘売神。イザナギ、イザナミの生んだ神々は、 |
|||||||||||||||||||||||||
29日 | 以上の系譜を一覧表にしてみよう。 |
イザナギ・イザナミで35柱の神誕生 イザナギ命 |
イザナミ命 ―大宜都比売神(食物の神) --火之夜芸速男神(火の神)など イザナミの死を悲しむ中で8神誕生(後述) ―泣沢女神 |
||||||||||||||||||||||||
30日 | イザナギ黄泉国へ行き、そして帰還する。 |
衝立船戸神、八十禍津日神、大禍津日神、 |
|||||||||||||||||||||||||
31日 |
神直毘神、大直毘神、伊豆能売神、 |
底筒之男神、中筒之男神、上筒之男神、 |