桜と出家遁世の西行 その2
この卯月は私の満80歳の誕生月である。目出度いのか、長生きし過ぎたのか分らない。だが、こうして生かされている。「死のうは一定」、日々、精一杯生きてゆくのみだ。「往生は一定」なのである。
平成23年5月度
| 1日 |
出家遁世の |
鈴鹿山うき世をよそにふり捨てて |
| 2日 | 山家集723 |
そらになる心は春のかすみにて |
| 3日 | 山家集1416 |
捨てたれど隠れて住まぬ人になれば |
| 4日 | 山家集1417 |
世の中を捨てて捨て得ぬ心地して |
| 5日 | 山家集725 |
柴の庵と聞くはくやしき名なれども 世に好もしき住居なりけり |
| 6日 | 山家集38 |
主いかに風わたるとていとふらん |
| 7日 | 山家集486 |
わがものと秋の梢を思ふかな |
| 8日 | 山家集571 |
わりなしや氷る筧の水ゆえに |
| 9日 | 山家集1126 |
白川の関屋を月のもる影は |
| 10日 | 山家集800 |
朽ちもせぬその名ばかりをとどめ置きて |
| 11日 | 山家集1128 |
枯れにける松なき跡の武隈は |
| 12日 | 山家集1129 |
踏まま憂き紅葉の錦散りしきて |
| 13日 | 山家集1442 |
聞きもせず束稲山の桜花 |
| 14日 | 山家集876 |
闇晴れて心の空にすむ月は |
| 15日 | 山家集895 |
鷲の山うへ暗からぬ嶺なれば |
| 16日 | 山家集1045 |
馴れ来にし都もうとくなり果てて |
| 17日 | 山家集1158 |
思ひやる心は見えてで橋の上に |
| 18日 | 山家集782 |
今宵こそ思ひ知らるれ浅からぬ |
| 19日 | 山家集1227 |
かかる世にかげも変らずすむ月を |
| 最後の歌を書きとめよう |
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| 20日 | 山家集1515 |
現をも現とさらに思へねば |
| 21日 | 山家集1327 |
心から心にものを思わせて |
| 22日 | 山家集1320 |
いとほしやさらに心のをさなびて |
| 23日 | 山家集912 |
うかれ出づる心は身にもかなはねば |
| 24日 | 山家集710 |
あはれあはれこの世はよしやさもあらば |
| 25日 | 山家集68 |
花見ればそのいはれとはなけれども |
| 26日 | 山家集66 |
吉野山こずえの花を見し日より |
| 27日 | 山家集1131 |
とりわきて心もしみて冴えぞわたる |
| 28日 |
終宵嵐に波をはこばせて |
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| 29日 | 山家集1515 |
現をも現とさらに思へねば |
| 30日 | 山家集1520 |
うらうらと死なんずるなと思ひ解けば |