一段高い立ち位置から、「日本の軍国主義復活」が根拠のないものであり、日本こそがアジア最大の民主主義・安定国家であることを、世界に発信を!

                         岡本行夫 2014.4.27

 オバマ大統領が、尖閣が安保条約に含まれることを日本で明言したその政治的意義は大きい。

 米国内には衝撃的な数字がある。2012年初めに米国人の89%が日米安保条約を維持すべきだと答えていたのが、昨夏には急落して67%になってしまった(数字は外務省)。劇的な数字の落ち込みは米国民が尖閣によって中国との戦争に巻きこまれると思っているためだ。

 米国民の心配は現実的ではないだろう。あの小さな無人諸島を防衛するのは、世界有数の海洋戦闘力を擁する自衛隊の役割だ。米第7艦隊の力を借りなければできないことではないだろう。それでは何のための安保条約第5条か。基本は中国に対する抑止である。しかし安保条約の下での米軍の行動は中国海軍と砲火を交えることに限られない。例えば米国が上空に早期警戒管制機を飛ばし、自衛隊に情報を提供することも立派な米国の防衛義務だ。具体的な対応については日米防衛当局間で緊密に協議すればよい。

米国民の間で「尖閣防衛意識」が減退しているのには、中国のキャンペーンによって、米国民が「日本と中国の領有権争いはどっちもどっち」と思ってしまっていることもある。対米広報は極めて大事だ。

 中国はアメリカとの「新型の大国関係」を築くためにも、アメリカに対して自分たちの道徳的立場を引き上げなければならない。人権やチベット問題などを抱える中国はこれまで世界の異端者と扱われてきた。いま中国の世界規模での反日キャンペーンが狙っているのは、「異端者はわれわれ中国ではなく、軍国主義への道を戻りつつある日本だ」と、中国と日本の道徳的位置をスリ替えることだ。そのために「第二次大戦時の反ファシスト戦線」の再結集を呼びかけている。そのやり方は巧妙かつ戦略的である。

 韓国の反日活動も激しい。全米各地での「慰安婦像」の設立を企て、「日本海」の呼称も韓国名に変えよ、と、大キャンペーンを張っている。中国韓国いずれも、勝負は国際世論を味方につけることにあると認識し(それは正しい)、その主戦場を米国に定めている。

筆者はつい最近、米国の十数カ所で日本の立場を講演する機会を得た。米国自身の安全保障がかかっているから聴衆は真剣だ。おびただしい数の質問も出る。通り一遍の説明では通用しない。歴史認識も含めて率直に日本の考えと悩みを語る必要がある。アメリカ人は理解しない国民ではない。中国と韓国がなりふり構わず仕掛けてきている泥仕合と挑発に乗る必要はない。一段高い立ち位置から、「日本の軍国主義復活」が根拠のないものであり、日本こそがアジア最大の民主主義・安定国家であることを、世界に発信していくべきである。時間はかかっても、米国市民が日本に軍配を挙げ、それが世界世論を作っていく。それが日本の目指す戦略である。

 オバマ大統領の明確な姿勢はその心棒になるだろう。(おかもと ゆきお)