安岡正篤の言葉 平成295月 徳永選

志は高く

 それ志は(まさ)高遠(こうえん)を存し、先賢(せんけん)を慕い、情欲を絶ち、凝滞(ぎょうたい)()つべし。 諸葛孔(しょかつこう)(めい) 「孔明その(がい)(せい)を戒むるの書」

 「それ志は当に高遠(こうえん)を存し」――志、人間の理想、目的というものはできるだけ高く、できるだけ遠く、高遠でなければならない。目先ではいけない。低くてはいけない。「先賢(せんけん)を慕い、情欲を絶ち」――先賢は先輩の賢者。肉欲・物欲というものをできるだけ整理し、捨てて、「凝滞(ぎょうたい)を棄つべし」――凝滞は()(とどこお)ること。人間は凝滞をするといけない。水でも凝滞すると腐る。血液でも凝滞したら大変だ。色々の病気が続出する。呼吸も凝滞したら大変だ。色々の病気が続出する。呼吸も凝滞、跌滞(てったい)したら呼吸困難になって死んでしまう。円通(えんつう)と言って(まど)かに通じなければいけない。知命と立命

 

足るを知れ

 足ることを知れば、家は貧しといえども、心は福者なり。足ることを知らざれば、家は富めりといえども、心は貧者なり。此処(ここ)をよく(わきま)え、かりにも(おご)らず、物好みをすべからず。諺に好きが身を亡ぼすといえる心得(こころう)べし。      平尾厚康

 たる、という字を手ると書かずに、足ると書くことに注意しなければなりません。足は人体の中で一番中心から離れ、重い上体を支えてこれを遠くまで運びます。昨今は昔のように歩かなくなったので、足が弱くなり、これが原因で病気にかかって苦しむ人が多くなりました。そこで、常に足を清潔にして、鍛錬しておりますと、身体は健康で、その日常生活は極めて満足となりましょう。

だから足るという意味がよくわかりますと、貧乏も苦にならず、心は金持ちでしょう。このところをよく承知して驕ってはなりません。また好きだからといって、いろいろな遊びにこってはいけません。                       

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