5月15日 人生が本当にわかって来た時 その三

 もう一つ、同じ、あきらか、でも少し趣の違うのか゜「了」という文字です。これは、あきらか、と同時に、おわる、という文字であります。

弘法大師の詩に「閑林独坐草堂暁。三宝之声聞一鳥。一鳥有声人有心。性心雲水?了々」という有名な七言絶句がありますが、この場合の了々は、あきらか、という意味です。また従って了には、さとる、という意味がある。漸く物事があきらかになり、人生がわかって来た時が、もうその生涯の終わる時でもあるのです。人間というものは実に微妙なものであります。了の一字、深甚な感興を覚えるではありませんか。    東洋思想十講